松山・大街道の大入亭からバー露口へ
松山城は、加藤嘉明が築いた城です。城が完成したのは1603(慶長8)年で、この時、勝山という地名を松山に改めています。城下町は、標高132mの城山(勝山)のふもとに建設し、ほぼ方形の町割りとしました。
その後、松山藩は蒲生氏を経て、1635(寛永12)年から松平氏が藩主となり、明治まで続きました。その間、1784(天明4)年元旦に、天守が落雷で焼失。現在の天守は、1854(安政元)年に再建されたものです。
第2次世界大戦終戦間近の1945(昭和20)年7月26日、その松山市に128機ものB29が襲来、市街地に焼夷弾の雨を降らせます。この爆撃で、松山では半数以上の家屋が焼失、松山市は一面の焼け野原となり、城下町時代の町並みは姿を消しました。
その中で、唯一戦災を免れた歴史遺産が、松山城です。そして松山城は今も、松山のシンボルとなっており、復興した松山市も、やはり城を中心につくられています。
愛媛県庁や松山市役所を始めとした官公庁や金融機関などが集まる松山市の中心地は、城山の南側に集中。かつて、上中級家臣団の武家屋敷があった「外側」と呼ばれる地域で、現在の一番町から三番町にかけての番町エリアになります。松山一の商店街「大街道商店街」は、この番町エリアを東西に分けるセンターにあり、北はロープウェー商店街、南は銀天街につながっています。
私も、松山には結構行っていて、コロナ禍前の2010年代には、覚えているだけで6回行きました。2011年の時は、前のブログに書いた鳴門、東かがわ、美馬を回ってから松山入り。2013年の時は、松山を拠点に、新居浜と内子、砥部へ行っています。この2回は松山に泊まっていますが、2014年に宇和島、愛南、大月、足摺、四万十、中土佐と回って高知から帰ってきた時は、松山は空港でレンタカーを借りただけでした。実はそんなケースも何度かあり、松山を四国のゲートウェイとして利用することもありました。そう言えば、松山の取材後、高速艇で呉に渡ったこともあり、松山は陸海空、全てにおいて交通の便がいいと実感しています。
そんな松山の大街道で、偶然見つけたのが、「大入亭」です。松山市内を走る路面電車・伊予鉄道「大街道」駅を降りると、目の前が大街道商店街で、大入亭は、そのアーケードに入ってすぐ左のビルの中にあります。立地はいいのですが、商店街に面しているわけではなく、ビルの中なので、気づかない人も多いかもしれません。私の場合、大通りより路地裏の方が好きなので、大街道の裏通りを歩いていて、「和食屋 大入亭」というビルのサインを見つけることが出来ました。
店内は、カウンター8席に小上がりが3卓あり、こぢんまりとした雰囲気でした。つきだしは、サザエと骨付きイカ(っていうんでしょうか?)、これだけでお酒が進みそうです。店の壁に、「瀬戸内海のお魚を白ワインで! おすすめです!」と書かれていたので、素直な私は白ワインからスタート。ちなみに、大入亭は、魚だけでなく、トリの塩焼きもおいしく、添えられたレモンも、瀬戸内だけに瀬戸田レモンを使っているようでした。
で、最初にお願いした刺身の盛り合わせは、白身中心のラインアップで、十数種類が盛られていました。サザエに続いてカツオも登場し、突き合わせでワカメちゃんも出て来ました。で、ここで日本酒にチェンジ。梅錦という蔵元の「蔵開」を選択しました。
ちょうどその時、テレビのニュースで、南三陸のワカメのしゃぶしゃぶが紹介されました。それを見ておかみさんが、「ワカメのしゃぶしゃぶですって・・・」と驚いているので、三陸の早取りワカメはやわらかくて、しゃぶしゃぶで食べるとおいしいし、色がさっと鮮やかな緑に変わるので、目でもおいしいですよ、と三陸の皆さんに代わってPRしておきました。
と、「本日の味」という掲示に「のれそれ」というのがあったので、「なにそれ?」と聞いてみたところ、アナゴの稚魚とのこと。早速それを注文して、次なるお酒は雪雀の「初香蔵」。蔵開も初香蔵も季節限定らしく、のれそれと共に春を味わってきました。
そんな私の様子を見て、カウンターで隣り合った方が、日本酒がお好きならと、「小富士」という超辛口の酒を勧めてくれ、それを頂いたのをきっかけに話が弾み、愛媛や松山の酒談義になりました。その中で、松山に名物バーがあるので、ぜひ行ってみて、と言われ、前のめりになる私。すると、大入亭のご主人が、案内してあげたら、と口添えしてくれ、3人の男性客と共に、名物バーへ向かうことになりました。
案内してくださったのは、当時76歳のマスターと70歳の夫人のお二人でやっているバー露口でした。ここについては、いろいろ書きたいこともあるので、記事を改めることにします。
露口に案内してくれた方たちは、予定があったらしく、1杯だけ飲んで立ち去り、私は、カクテルを2杯頂いた後、「かめそば」を買って、ホテルへ戻りました。かめそばは、元「かめ」の焼きそばで、土産用は、新聞紙に包んでくれ、割り箸もはさんでくれました。もう、この時点でB級ハンターの心がくすぐられます。
大入亭で隣り合った方は、私と同年代で、子どもの頃、父親が飲んだ帰りにお土産で買ってきてくれ、その頃も新聞紙に包まれていたそうです。今の店は復刻版らしいのですが、包装も継承したんでしょうね。復刻店のご主人自体が、発祥の店「かめ」のそばのファンで、それを何とか復活させたいと思ったようです。で、新聞で包まれた、このおみやを買ったところまでは、個人的には最高ランクに近い評価だったんですが・・・。
そう言えば、大入亭のお客さんたちが、普通の焼きそばとは明らかに違う食感で、あの味と麺のかたさは絶対に真似できない、と太鼓判をおしつつ、「ただ、C級ですよ」と話していました。その時、あれ? B級を通り越しちゃうんだ、と思ったものです。
とりあえず、部屋に戻って食べログなどで確認したら、絶賛のコメントや秘密のケンミンショーで取り上げられたなどの記載が・・・。それら高評価を見た上で、いざ実食。かつお節とちりめんじゃこがトッピングされた焼きそばで、味そのものはいたって普通です。しかし、この食感は、かなり評価が分かれるところだと思いました。
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