四国巡礼のスタートは渦潮を超えて

鳴門の渦潮
鳴門市は四国の東端、渦潮で有名な鳴門海峡の西側にあり、大鳴門橋で兵庫県の淡路島と結ばれています。鳴門の渦潮は、瀬戸内海と紀伊水道の干満差により、激しい潮流が発生することで生まれます。春と秋の大潮時には、渦の直径が最大で30mに達することもあり、渦の大きさは世界最大と言われています。

また、鳴門海峡の潮流は、イタリアのメッシーナ海峡、カナダのセイモア海峡と共に「世界三大潮流」と言われています。その速さは、大潮の最大時には、時速20km以上にもなり、こちらは日本一の速さとされています。

そんな渦潮を見るには、「渦の道」と呼ばれる大鳴門橋の遊歩道や、鳴門公園の展望台などがありますが、やはり間近で見られる観潮船がお勧めです。観潮船は、うずしお汽船と鳴門観光汽船があります。

うずしお汽船は、2017年から4年連続で、鳴門市の屋外アクティビティ第1位を受賞。観潮船は、1日18便で、所要時間は約30分です。陶板複製画を中心とした大塚国際美術館の隣にあり、鳴門公園千畳敷展望台や渦の道入口、大鳴門橋架橋記念館などの観光スポットへも歩いて10分程度となっています。


一方の鳴門観光汽船は、大型の「わんだーなると」と水中観潮船「アクアエディ」の二つのタイプの観潮船があります。「わんだーなると」は1日12便で、所要時間は約30分。予約なしで乗れます。一方の「アクアエディ」は1日15便で、所要時間は約25分。こちらは予約制です。

大鳴門橋を離れて鳴門市街地を抜け、西へ15分ほど車を走らせると、大麻町に出ます。ここは、全国にその名が知られる大谷焼の産地です。

大谷焼はなんと言っても、大がめや大鉢類など、大物陶器で有名です。阿波特産の藍染用の藍がめの需要で栄え、明治・大正期には大いに活況を呈しました。しかし、藍染の不振と共に次第に衰退。最近では、花瓶や湯飲みなどの日用雑器も作られています。超大物の大がめの場合、一人が台の上に乗り、もう一人が寝そべって足でロクロを蹴るという方法で作陶します。ここならではの光景でしょう。

また、大麻には、四国八十八カ所霊場の一番札所霊山寺と、二番札所極楽寺があります。第1番札所から第88番札所まで、札所番号の順に巡拝することを順打ちといい、そのスタート地点となる霊山寺は、約1300年前に聖武天皇の勅願で行基が開いたと言われます。弘法大師が、霊山寺を1番札所としたのは、密教の阿字五転(発心・修行・菩提・涅槃・利他)の法則に従って、四国の東北の角を発心点としたためとされています。


この霊山寺がある大麻町板東は、べートーベンの「第九交響曲」が、日本で初演された場所としても知られています。初演が行われたのは、板東俘虜(ふりょ)収容所で、第1次世界大戦で捕虜となったドイツ兵による演奏でした。板東俘虜収容所は規則の範囲で捕虜に自由を与え、地元民との交流も許していたそうです。これには、所長を務めていた松江豊寿という方の考えが大きく反映されていたようで、松江所長は父が会津藩士だったため、敗者の屈辱を痛いほど理解しており、収容所でも人道的な管理を行っていたと伝えられています。


鳴門市では、この歴史を後世に伝えようと、1972(昭和47)年に「ドイツ館」を開設しました。更にこれが、元ドイツ兵らに伝わり、2年後の74年、鳴門市とドイツ・リューネブルク市との姉妹都市提携がなされました。

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