黒潮に育まれた四国最南端の町・土佐清水

足摺岬
ここ3日間の記事は、同じ時に回った場所を連続で紹介しています。この時は、愛媛県の宇和島市と愛南町、高知県の大月町と四万十市の取材で、松山空港から四国入りして、高知空港から四国を離れるという旅程でした。初日は、宇和島市岩松と愛南町外泊で取材、宿を予約していた大月町まで、高速で約100km、下道で約100km、という感じの移動でした。

2日目は、大月町柏島を取材した後、次の取材地・四万十市まで移動しましたが、途中の土佐清水市と言えば、以前の記事(おいしい食べ物が多かった観光地ナンバー1 - 高知)に登場した、高知の伝統食研究の第一人者、松﨑淳子高知女子大学名誉教授ご推奨の宗田節の産地です。更には足摺岬を始め、有名スポットがいくつかあるので、道すがら立ち寄ってみました。

柏島から足摺岬までは約60km、大月町の中心部からは国道321号の一本道です。土佐清水市との境にある、大月町の才角海岸からはほとんど太平洋に面した海沿いを走ることになります。

才角海岸から13kmほど走ると、土佐清水市の竜串海岸に出ます。ここには、海中展望塔の「足摺海底館」があります。全国に六つある海中展望塔の一つで、中四国では唯一の施設だそうです。「普段着のままで、自然の海を散歩出来る」をウリにしていて、建物に入ってらせん階段を降りると、海の中が覗ける丸い小窓が付いた部屋があります。外は自然の海ですが、よほど魚が多いのか、水族館と変わらぬほどさまざまな熱帯魚を間近に見ることが出来ます。


また、周辺には、土佐の海と黒潮の魚たちをテーマに、サメやマンタ、ウミガメなどを展示する足摺海洋館SATOUMIやグラスボートなどの施設があります。更に、竜串海岸には、約1700万年前に浅い海で生まれた地層が、潮風や波に洗われることによって出来た奇岩奇勝が続いており、その天然の岩の上を歩く遊歩道もあります。

竜串海岸から足摺岬までは25kmほどですが、その途中にも、いくつか見所があります。その一つは、以前、同じ編集部にいたK嬢が取材の際に訪れ、土佐清水に行ったらぜひ見てきてほしいと太鼓判をおしたアコウの木です。アコウはクワ科の樹木で、他の木に寄生して育ちます。樹上で芽を出すと、宿主の枝や幹をつたって気根を下ろし、やがて宿主を覆って枯死させます。

竜串海岸から20kmほどの松尾天満宮の裏手には、3本のアコウがあり、1本はまだ若く、イスノキに着生する様子がよく分かります。また、樹高25mの一番の巨樹は、無数の気根が絡み合い、かつて宿主のあった内側は空洞になっています。更に、側には、「石抱きアコウ」と名が付いた、かなり不気味なアコウの木もあります。同じクワ科の常緑高木には、カンボジアのタプローム遺跡の建物を覆い尽くすガジュマルが有名ですが、この「石抱きアコウ」は、なんかそこら辺の石を集めてきて、抱え込んでいるように見え、ある意味、こちらの方がホラーな感じがします。

白山洞門
で、ここから5kmほどで足摺岬になりますが、その手前にも「白山洞門」というスポットがあります。足摺岬は、波の浸食などによる洞窟や洞門がいくつも見られますが、白山洞門は高さ16m、幅17mという大きさで、花崗岩の洞門では日本一の規模と言われています。県道27号沿いの白山神社の前に、海岸へ続く階段があり、これを降りて行くと洞門を間近に見ることが出来ます。ただ、かなりの急階段で、Googleのクチコミでは、「筋肉痛になりますけど景色は最高なので星5」とか「とにかく急な階段を下った海岸にあります。波で侵食されたスケールのデカイ洞門です。帰りも半端なくしんどいので予め覚悟して訪れてください」などの声が聞かれます。

その中に、「行きはよいよい 帰りはキツい! 健脚なら是非訪れてみるべき場所。なかなか珍しい光景で、カップルでここまで来れば良い思い出になるかと思います」という声があり、何のことか分からずウェブ検索をしてみると、「洞門がハート形に見えるということと、洞門の上の岩盤が女性の横顔の様な形に浮き出てきて、それが洞門を祝福しているように見える、とのことから『海の女神が祝福する恋愛成就のパワースポット』としても、近年評判になっています」とのこと。私は全く気づきませんでしたが、見る角度によっては、ハート型に見えるようです。

四国霊場第38番札所 金剛福寺

白山洞門から足摺岬は歩いても5分とかからないので、足摺岬駐車場に車を停めておいてもいいでしょう。駐車場の真ん前には、四国霊場第38番札所の金剛福寺があります。寺は、822(弘仁13)年、嵯峨天皇の勅願によって、弘法大師が三面千手観音を本尊として開創したと伝えられます。そのため、歴代天皇の勅願所となり、皇室や武将からも尊崇されました。特に源氏一門の帰依が厚く、源満仲は多宝塔を建て、その子・頼光は諸堂の修復に寄与しています。

足摺岬 灯台
足摺岬は、四国最南端の岬で、突端には白亜の灯台が建っています。 我が国でも最大級の灯台の一つで、1914(大正3)年に点灯されて以来、沖を行き交う船の安全を見守り続けています。近くには、展望台が2カ所あり、どちらからも太平洋の水平線を望むことが出来ます。

ところで、足摺岬には、照葉樹の原生林があります。照葉樹とは、カシやシイ、タブノキ、ツバキなどの常緑樹で、葉に厚みがあり、ツルツルとして光沢のあるのが特徴です。温暖で降雨量が多い足摺岬には、亜熱帯性のヤシ科の植物であるビロウも自生しています。岬の灯台から、天狗ノ鼻と呼ばれる突端にかけて巡る遊歩道には、両側にヤブツバキが茂り、2月には見事な花のトンネルとなります。

また、白山洞門入口となる白山神社の手前には、足摺亜熱帯植物園があります。営林所が開設した植物園で、自然の植生をそのまま生かしたタブノキやアコウ、ホルトノキ、多種多様のシダ類の他、ランや外来種の植物などが植栽されています。


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