ANAの機内誌をきっかけに見つけた、石垣の集落

石垣の里 外泊集落
以前、ANAの機内誌『翼の王国』で紹介された、愛媛県愛南町に興味を持ち、出張から帰った後、愛南町について検索したことがあります。記事は、「アイアイ先生の生物多様性紀行」。「アイアイ先生」とは、猿のアイアイで有名なマダガスカルの環境保護を長年続けている島泰三博士のことで、この記事には、地元の案内人がいました。そこで、その案内人に話を聞くのが手っ取り早いと、まずはその方を検索してみました。

記事では、「旅の水先案内人、自称"漁猟長"の山﨑晴久さん。この漁猟長、このあたりのあらゆる事情に精通しているから心強い」とあります。で、最初のヒットで、山﨑さんは、環境NPOあいネットワークの代表であることが分かりました。また、取材協力としてクレジットが入っていた南宇和ライオンズクラブの会員であることも判明。まずは、その辺から当たってみることにしました。

すると、記事の1年半ほど前、南宇和ライオンズクラブの事業として、島博士を招いて「どくとる・アイアイ環境教室」を開催したとのこと。本文の「この桟橋なら子どもも安全だから、釣り大会をやりますか? そのあと、料理教室も」というのは、この1年半前の事業で実施したものだったようです。


これには、小学3~6年生とその保護者約50人が参加。親子魚釣りと料理教室の後、島博士による子ども向けのワークショップが行われました。更に夕方からは、地域の方たちを対象とした講演会「生物多様性入門イン愛南」も実施され、参加された方たちからは、「愛南町には、何もないと思っていましたが、実は自然の宝庫だと気づきました」などの声が聞かました。また、島博士も、「御荘湾(みしょうわん)は国の宝です。いつかは、そのことを全国民が理解する時が来ると思います」と話されていたそうです。


島博士が、「国の宝」と称した御荘湾は、環境省の「日本の重要湿地500」に選定されており、確かに日本の海の宝物であることも理解しました。

その一方、取材協力の南宇和ライオンズクラブと、御荘という地名で、他のトピックも検索に引っかかりました。それは、御荘病院でした。

石垣の里 外泊集落
御荘病院は1962年に開院した精神科の病院で、74年には退院した精神障害者の社会復帰施設平山寮を開設しました。その後、米やサツマイモの栽培,養豚,闘牛の飼育,牡蠣の養殖,釣り筏の経営などのさまざまな作業を通じて、平山寮入居者らの社会復帰を目指してきました。また、89年には南宇和精神障害者の社会参加を進める会が発足しましたが、これに、南宇和ライオンズクラブが大きく関わっていたようです。

というのも、御荘病院を運営する財団法人正光会の渡部三郎理事長も、病院の長野敏宏院長も、同クラブの会員だっため、クラブと精神障害者との交流が始まったとのこと。そして恒例事業として、御荘病院の夏祭りや運動会を支援したり、平山寮入居者や病院関係者たちと飲み会で交流したりしていました。

こうしたことが下地となって、2006年には、さまざまな立場の住民が、共に参画し、地域振興・環境保全・就労支援活動を通じて地域貢献を行うことを目的に、NPO法人ハートinハート なんぐん市場を設立。愛南町の施設「山出憩いの里温泉」の指定管理を始め、原木シイタケや柑橘類などの栽培、食品加工、川魚養殖といった多方面の事業を手掛けてきました。

その後、宇和島から高知の大月、四万十などを回る機会があり、障害者の就労支援に関する企画で、取材を打診しました。しかし、ちょうどアボカドの事業がスタートしたところで、それが軌道に乗るまで取材は停止しているとのこと。

石垣の里 外泊集落

なので残念ながら、なんぐん市場の取材はかないませんでしたが、代わりに外泊にある「石垣の里」を撮影することにしました。

石垣の里 外泊集落
外泊は、愛南町中心部から、西へ向かって突き出た西海(にしうみ)半島西部の入り江にあります。私は、宇和島市の岩松(世界的な文化遺産ウォッチ・リストに認定された岩松の町並み)に寄ってから、こちらへ来ましたが、岩松には松山自動車道の終点・津島岩松ICがあり、このICから外泊までは約37kmです。国道56号を南下して、南レク御荘公園の辺りで御荘湾に注ぐ僧都川を渡り、道の駅御荘MICを過ぎた所で右折。あとは県道34号を道なりに走れば、中泊を経由して外泊に着けます。

外泊の集落は、入り江から急斜面の山の中腹まで、約50軒の民家がひしめき合うように建っており、それぞれの家は、台風や冬の強い季節風から守るため、石垣で囲まれています。幕末に、中泊の人口が増え、二男以下の50軒ほどが集団で分家移住。中泊の外ということで外泊と称し、土地を造成して、石垣を積み上げ、1879(明治12)年頃に集落が完成したそうです。

現在、この外泊の集落は、「石垣の里」と呼ばれ、「未来に残したい漁業漁村の歴史文化財産百選」(水産庁)、「美しい日本の歴史的風土100選」(財団法人古都保存財団)に選定されたり、「日本の美しいむら農林水産大臣賞」を受賞したりして、注目を集めています。集落の上の方には、「だんだん館」という観光案内を兼ねた食事処があります。私は、ここでコーヒーだけ頂いたのですが、すぐ下が漁港ということもあって、鮮魚を中心とした定食もあるようです。

なお、取材が出来なかった、なんぐん市場ですが、アボカドは8年の歳月がかかりましたが、2018年2月にデビュー。それも、東京・銀座の千疋屋で扱ってもらったものでした。現在、「にっぽんのアボカド」のキャッチで、絶賛売り出し中です。千疋屋でも扱っていますよ。

また、御荘病院は2016年に閉鎖、新たに御荘診療所としてスタートを切りました。御荘病院では、精神疾患を患っている方が、地域の中で暮らせることを目指し、さまざまな取り組みを行ってきた成果でしょう。なんぐん市場では、Facebookページで情報発信をしているので、関心を持った方は覗いてみてください。


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