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江戸時代から伝わる郷土玩具鯛車で地域活性化を図る

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新潟市西蒲区巻地区に、「鯛の蔵」と呼ばれる建物があります。これは、郷土玩具「鯛車」の伝承を目的とした施設で、大小さまざまな鯛車が展示されている他、市民を対象にした鯛車の製作教室も開催されています。 鯛車というのは、張り子や木、紙などで作られた鯛の形の玩具に車を付けたものです。疱瘡(天然痘)除けの玩具の一つで、新潟や埼玉、滋賀、鹿児島など各地に見られます。 医学の発達していない江戸時代、疱瘡は命にも関わる病で、疱瘡を擬神化した疱瘡神は悪神として恐れられました。そして、この疱瘡神は犬や赤色を苦手とすると考えられ、子どもたちに「赤物」と呼ばれる疱瘡除けの赤い人形や玩具などを与える風習がありました。 巻の鯛車は、竹と和紙で作られ、ウロコはロウで描かれています。お盆になると、浴衣を着た子どもたちが、鯛車を引いて家の周りや町内を歩く姿が見られました。しかし、それも昭和の中頃までで、いつしかお盆の風物詩・鯛車は巻から姿を消してしまいました。 鯛車が消えた原因は、作り手の不在でした。かつては、籠屋や提灯屋などが副業として作っていましたが、時代の変遷と共に、そうした手仕事をする人がいなくなり、それに伴って鯛車も消えてしまいました。そこで2004(平成16)年、市民有志による「鯛車復活プロジェクト」が立ち上がり、鯛車の製作教室が開かれるようになりました。 「鯛の蔵」はその拠点で、巻文化会館の文書蔵だったものを改装し、11(平成23)年にオープンしました。「鯛の蔵」の向かいに事務局を構える巻ライオンズクラブも、この活動に共鳴し、蔵の前に芝を敷き、ドウダンツツジ20本を植栽するなど、会員たちが力を合わせて造園工事を実施。「鯛の庭」と命名し、石碑も設置しました。これらの動きに呼応して、地元商店街も「まき鯛車商店街」と改名、鯛車を商店街のシンボルとして活用するようになりました。 そしてこの年、「鯛車復活プロジェクト」は、日本の伝統文化の振興と地域社会の活性化に貢献したとして、第4回ティファニー財団賞「伝統文化振興賞」を受賞。現在、お盆に行う「鯛の盆」や、古い町並みとコラボする「鯛の宵」など、さまざまなイベントを行い、古き良き伝統を継承していこうとしています。