銘酒「鶴の友」がある函館の居酒屋てっ平
もちろん自家用ジェットなどではなく、その当時は、函館~旭川間を北海道エアシステム(HAC)の定期便が飛んでいたのです。この路線は2013年に運休となったようですが、HACはもともと函館空港を拠点に、1998年、函館と旭川、釧路間で運航を開始した航空会社でした。日本エアシステム(JAS)と北海道が第三セクター方式で設立し、JASが日本航空(JAL)と合併したことからJALグループになりました。JALの経営破たん後、グループから離れた時期もありましたが、現在は全便JAL便として運航しています。
深川での取材を終えた私は、旭川空港へ移動し、函館便にチェックイン。時間となり、案内に従って搭乗ゲートから中に入ったものの、航空機がありません。あれれ、飛行機はどこ? と思っていたら、階段を降り、外へ。すると、視線の先にちっちゃな航空機がポツンとたたずんでいるのが見えました。そう、搭乗したのは、JALグループ最小機SAAB340B(サーブ340B)だったのです。
あっ、あれ? 飛べるんか? 何人乗れるんだ? と一瞬、不安に思ったものの、そう言えば以前、石垣島から与那国島に行く時は、もっと小さな航空機でした(「日本最東端と最西端 - 納沙布岬と与那国島」)。それに比べりゃ、驚くことはないか、と気を取り直し搭乗しました。
ちなみに、 サーブ340Bは、今もHACの主要使用機となっています。同型機は、鹿児島空港を拠点とするJAL(日本航空)グループのコミューター航空会社・日本エアコミューター(JAC)でも使われていましたが、2019年12月に引退。この時、「JAC SAAB340B 退役チャーターツアー」が実施されるなど、飛行機ファンから惜しまれる退役だったようです。
サーブ340Bの席数は36席で、左1列、右2列が標準で、最後部のみが右3列。機内の高さは最大1.83mと、うちの息子だと頭をぶつけてしまう高さしかないため、通路が一段低くなっているというユニークな構造になっています。
さて、そんなわけで、なかなか珍しい経験をした私ですが、北海道出張では他にも、取材と飛行機の時間の関係で、寝台特急で帰ってきたり、新幹線で往復したりしたことがあります。新幹線を使ったのは、飛行機に空席がなかったためで、15時半ぐらいに上野から「はやぶさ」に乗車。新函館北斗駅までは約4時間、そこで在来線に乗り換え、函館駅に着いたのは、20時を過ぎていました。
そんな時間だったので、宿は駅前のスマイルホテル函館でした。時間も時間だったので、部屋に荷物を入れると、すぐに外出。ホテルの裏に、「丸善瀧澤」という酒屋さんがあり、外から立ち飲みをしている人たちが見えました。むむっ! ここは押さえなくては、とカメラマンの田中さんと私。ただ、4時間も乗っていた新幹線の中で、一応、店を検索していたので、ここは帰りに寄ろうと、すぐに相談がまとまりました。
目指すは、居酒屋「てっ平」と、大門横丁。まず、「てっ平」の場所を確認してから、その先にある大門横丁をチェック。ここは屋台村になっているようで、居酒屋やジンギスカン、バー、寿司など、いろいろな店が入っていました。東日本大震災後、被災地に出来た屋台村の支援に関わったり、何度も訪問したりしていたので、屋台村というと心ときめくものがあるのですが、函館朝市同様、観光客向けかなと思い、結局パスしました(私たちも観光客みたいなもんですが)。
で、少し戻って、「てっ平」に入ることにしました。ここを選んだのは、新潟の銘酒「鶴の友」を置いてあるからでした。鶴の友は、蔵元が地元の人の口に合った酒造りを目指しており、新潟市以外ではほとんど売られていません。そのため、県外不出の地酒とも呼ばれていますが、その旨さは口コミなどで広まり、知る人ぞ知る銘酒となっています。
以前、事務所があった築地の蕎麦屋「さらしなの里」には、この鶴の友が置いてあり、私は時々飲んでいました。その銘酒が、函館で飲めるなんて、とそれだけでこの店を選ぶ価値があるというものです。
しかし、カウンター席に着くなり鶴の友を注文するも、残念ながら品切れ中とのこと。正直がっかりしましたが、他にもいい日本酒がラインアップされていたので、田中さんとそれぞれ好きな銘柄を頼み、飲み始めました。また、食べ物のメニューももりだくさん。魚介類はもちろん、スモークチーズとか手羽先スモークなんてのも気になりますし、カジカ汁(鍋こわしみそ汁)もいい感じです。
それに、店先や店内に書かれた七五調の言葉たちが何とも言えず楽しく・・・。ちょっと紹介すると、「二日酔い 酒が悪いか 己が馬鹿か 酒でも呑んで 考えよう」「ポックリと死ねたら良いなあ 今日じゃなく」「カウンターでは 肩書き無用 下ネタ禁止」「健康の為に生きてる訳じゃなしイイじゃないかい」「暑さ寒さもこの世だけ」「老後だが老後の為に稼いでる」「死ぬ気でやれば死ぬかも知れぬ歳になり(笑)」など。メニューの上には堂々と、「高齢者営業の為 注文忘れる事あります。要請求!」と宣言されていました。
店主の原田さんは、1974年から、今の店の近くで「鉄板焼き・お好み焼き 鉄平」を経営していましたが、30年を経た2004年に、そちらを人に譲って、新たに居酒屋を開いたそうです。@HakodateTeppei のアカウントでTwitterも開設しており、ちょうど10年前、「俺も62歳。そろそろって云う事かなぁ。〈あきらめはてっぺんの禿のみあらず 屋台の隅でひとり酒を呑む - 居酒屋兆治より〉でも俺はもう少しあがくぞ~」とツイートしていました。それから10年、コロナ禍にも負けず、今も営業を続けられているようです。
ところで、「てっ平」に長居をしすぎた模様で、ホテルに戻りながら「丸善瀧澤」で角打ちをするはずが、既に店が閉まっており、田中さんと私は、暗い店内を呆然と見つめるのでありました。後で知ったのですが、「丸善瀧澤」は、函館唯一の角打ちだそうで、全くもって惜しいことをしたものです。翌朝、ホテルでの朝食はパスして、函館名物朝市に向かいました。函館と言えばイカなので、ここに来ると、イカを食べることが多かったのですが、この時は路線変更。ちょうど年末だったこともあり、娘と息子のお嫁さんが大好物のイクラを正月用にゲットしておこうと、店の人と交渉。店で丼を食べることも出来たので、そこでイクラ丼を食べてきました。
また、朝市を見て歩いている途中、「かにまん」を見つけ、ミーハーな私は思わず飛びついてしまいました。中には、たっぷりカニが詰まっていましたが、カニ本来の味を損なわないよう気を配っているためか、薄味になっていて、ちょっと微妙。私もそうでしたが、肉まんのイメージが強く、そのカニ・バージョンだと思う人は、少々アテが外れるかもしれません。
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