南阿蘇村でお世話になった宿のいい話

南阿蘇村

今回は、熊本地震について書いた前3本の記事の余録です。地震発生後10日近く経った4月24日に初めて西原村に入った際は、車中泊だったのですが、5月以降は出来るだけ取材先に近い宿を拠点にしました。

熊本城に近いアークホテル熊本城前、益城町と西原村に近いグリーンリッチホテルあそ熊本空港ホテルルートイン阿蘇くまもと空港駅前、それに南阿蘇村のグリーンピア南阿蘇ペンションルミナス、ペンションハーモニーなどです。


熊本市内に関しては、シティホテルもビジネスホテルもたくさんあるので、特に問題なしでしたが、他はオンライン予約大手の楽天トラベルやじゃらんで、飛行機のパックで出てきた宿を押さえました。益城町には、エミナースというホテルがあるのですが、ここは当時、被災された方の避難所になっていました。ただ、益城や西原は熊本空港がある場所なので、周辺にビジネスホテルが点在しており、特に宿には困りませんでした。

南阿蘇村
グリーンリッチホテルあそ熊本空港は菊陽町、ホテルルートイン阿蘇くまもと空港駅前は大津町にそれぞれありますが、どちらも熊本空港から車で14、15分の所にあり、近くには鍋ケ滝の取材(裏からも見ることが出来るフォトジェニックな滝)の際に泊まったホテルビスタ熊本空港や、ベッセルホテル熊本空港、カンデオホテルズ大津熊本空港、カンデオホテルズ菊陽熊本空港、HOTEL AZ 熊本大津店などが、熊本から南阿蘇村へ向かう国道57号沿いに建っています。

このうち、ホテルルートイン阿蘇くまもと空港駅前は、JR豊肥本線肥後大津駅から歩いて2分ほどの所にあり、近くには居酒屋さんがあったり、鍋ケ滝撮影で泊まった時に行った馬肉料理の「馬勝蔵」も歩いて5、6分と、かなり利便性のあるホテルでした。

地震があった2016年の取材はいずれも単独でしたが、この時は地震被害から再建された益城町給食センターの取材で、カメラマンの田中さんが一緒だったため、飲み歩くことを想定していました。ただ、給食センター再建支援の中心になった方と取材のコーディネートをしてくれた方が、両方とも熊本市の方で、しかも一人はお酒を飲まず車の運転が好きな方で、車で送迎するからと、熊本市内の馬肉ダイニング「馬桜」に連れて行かれ、結局、飲み歩きの利便性は何の意味も持ちませんでした。

一方、南阿蘇村は、草千里ケ浜や白川水源など、豊かな自然を背景とした観光地となっています。

南阿蘇村

草千里ケ浜は、阿蘇観光に訪れる人が必ずといって良いほど訪れる代表的な観光スポットです。阿蘇五岳の一つ、烏帽子岳北麓の火口跡に広がる大草原と、雨水が溜まって出来たと言われる池、それに放牧された馬とが織りなす牧歌的な風景が展開します。

白川水源は、遠く有明海に注ぐ一級河川・白川の水源で、水神を祀る白川吉見神社の境内にあります。毎分60トンの勢いで湧出する水温14度の水は、透明度が高く、日本名水百選に選ばれています。

そんな南阿蘇村で、最初に泊まったグリーンピア南阿蘇は、南阿蘇カントリークラブが経営しているホテルで、外輪山の中腹にあり、阿蘇五岳と向き合うように建っています。また、6月にお世話になったペンションルミナスは、地震で食器がほぼダメになるなど、当時はまだ通常営業が出来ない状態で、とりあえず復興関係者のみの臨時営業となっていました。大変な中、受け入れてくださって感謝です。

もう一つのペンションハーモニーは閉業されて、現在はペンションティンクナになっています。で、そこには次のような物語があります。

ペンションティンクナは、熊本地震の前は、九州で最も古いペンションビレッジの一つ、メルヘン村(南阿蘇村河陽)にありました。地震前、メルヘン村では6軒のペンションが営業していましたが、熊本地震で崖が崩れ、地割れが丘の中を貫き、ほとんどの建物が全壊となりました。

当初、集団移転によるペンション再建を模索しましたが、行政との話し合いがうまくいかず、それぞれ自力再建を選択するしかなくなりました。そのうちの一つペンションティンクナのオーナー森尾寛昭さんは、2007年に北海道から移住してペンションをオープン。自力再建を諦め廃業を決めたオーナーが出るなど、途方に暮れる状況が続く中、ペンションハーモニーのオーナー夫妻が、ペンションを譲ってくれることになりました。

ハーモニーのご夫妻には、ティンクナのオープン前から相談に乗ってもらったり、お世話になっていたそうです。そうした経緯もあったのか、再建の道を絶たれて途方に暮れる森尾さんたちにペンションを譲って、自分たちはリタイアすると話していたそうです。

森尾さんたちにしても、もともとペンションハーモニーさんの常連だったこともあり、かなり複雑な思いがあったようですが、引退を決め、自分たちに後を託したいと言ってくださった気持ちに応え、復興していく阿蘇の姿を伝えていきたいとしています。


ちなみに、ペンションティンクナでは、オーナー夫人ひとみさんの古里・北海道置戸町のオケクラフトを食器として使っているそうです。オケクラフトは、「成長に100年かかった木では、100年使える物を作る」という考え方をベースに作られたクラフトで、木のぬくもりが伝わってくる器となっています。私も一度、取材させて頂いたことがあり、また友人が、置戸に移住してオケクラフト工房を開いているので、とても親しみのある器です。

関連記事→木のぬくもりを伝える北国のクラフト

コメント

このブログの人気の投稿

悲しい歴史を秘めた南の島の麻織物 - 宮古上布

愛媛県南部の初盆行事 - 卯之町で出会った盆提灯

銘菓郷愁 - 米どころ偲ばせて「養生糖」 新潟県新発田

『旅先案内』都道府県別記事一覧

岩手の辺地校を舞台にした「すずらん給食」物語

上州名物空っ風と冬の風物詩・干し大根 - 笠懸町

越後に伝わるだるまの原型「三角だるま」

地域の復興に尽くすボランティアの母 - 八幡幸子さんの話

飛騨高山で味わう絶品B級グルメとスーパージビエ

日本最北端・風の街 - 稚内