江戸の面影を今に伝える中山道、木曽路の宿場町


中山道69宿は江戸幕府が整備した5街道の一つで、日本橋から武蔵、上野、信濃、美濃の国々を通り近江の草津で東海道と合流して、京都の三条大橋へ至ります。中部山岳地帯を通る中山道は太平洋岸の東海道に比べて難所が多く、中でも木曽路は難所続きの厳しい道のりでした。

木曽路は、現在の長野県塩尻市桜沢から岐阜県中津川市馬籠までの約90kmで、その間に宿場は11あります。駒ケ岳を主峰とする中央アルプスと御岳山を主峰とする北アルプスの間に深く刻まれた谷間を縫い、幾度も険しい峠を越えます。江戸時代の旅人は、だいたいが2泊3日で歩きました。中山道が国道19号になった現在でも、木曽路には往時の街道の雰囲気が残ります。中でも宿場の景観をよくとどめているのが奈良井(塩尻市)と妻籠(南木曽町)。いずれも国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。


江戸から数えて34番目、木曽路に入って2番目の奈良井宿は、標高が940mと木曽11宿で最も高い宿場です。両側に山が迫り、行く手には道中きっての難所、鳥居峠が控えています。木曽路最大の宿場町で、「奈良井千軒」とうたわれるほど賑わいました。

奈良井川沿いの旧街道にはおよそ1kmにわたって、2階のひさしがせり出した出梁造の商家や旅籠が連なります。現在の家並みは1837(天保8)年の大火後のもので、本陣や上問屋、道が直角に折れ曲がる鍵の手など宿場の姿をそのまま残しています。

「木曽路はすべて山の中である」。島崎藤村『夜明け前』の書き出しです。

ちきりや7代目手塚万右衛門の手塚英明氏
山に囲まれた木曽の産業の中心は、ヒノキ、サワラ、ネズコ、アスナロ、コウヤマキの木曽五木に代表される木材です。木曽漆器は600年余り前に木曽福島の八沢で作られたのが起源とされます。400年ほど前からは奈良井の北側にある平沢集落(塩尻市木曽平沢)でも漆塗りが行われ、やがては主産地となりました。江戸時代には奈良井宿を往来する旅人の土産物として人気を集めます。木曽漆器は、ヒノキやサワラなどの材を使い、主に木肌の美しさが引き立つ木曽春慶塗の手法が用いられます。

明治初めには、下地の材料となる「錆土」と呼ばれる粘土が奈良井で発見され、他の産地よりも堅牢な器が作られるようになり、飛躍的な発展を遂げました。旅館や料理屋などの業務用として需要が高まり、輪島や会津若松と並ぶ漆器産地としての地位を確立しました。98年の長野冬季オリンピックでは、メダルに木曽漆器が使われて話題を呼びました。

寛政年間創業の老舗「ちきりや」では木曽漆器の伝統に新しい技法を加え、日常にも使いやすい漆器を作っており、使い込むほどに味わいが出てきます。平沢の旧街道沿いには、こうした漆器店や工房が並び、漆塗りの工程を見学させてくれる所もあります。

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昨日の記事(名水とオオムラサキの里・長坂で味わうこだわりのそば)に書いた北杜市の取材後、次の目的地・長野県大滝村へ向かうため、塩尻に泊まったことがあります。その時のことも、少しだけブログ(日本ワインの革命児・ウスケボーイズを探して)に書きましたが、夕食で入ったホテル近くのダイニングバーで、「ウスケボーイズ」の一人、城戸亜紀人さん(Kidoワイナリー/塩尻市)の城戸ワインに巡り会うことが出来ました。


そのダイニングバーは、「BrasserieのでVin」というお店でしたが、昨秋、5月に閉店していたことを知りました。コロナ禍という昨今の状況を鑑みて、今後も飲食店には厳しい状態が続くだろうと判断した結果だそうです。また、2017年に設立したワイナリーの畑が当初より広くなり、作業が忙しくなったことも要因だったようです。

「BrasserieのでVin」のオーナーシェフ稲垣雅洋さんは、初期中山道の塩尻宿から善知鳥(うとう)峠を越えた、最初の宿場・小野宿があった塩尻市北小野で生まれ育ちました。東京で料理の修業をした後、塩尻のワイナリーで半年ほど、ワインづくりを体験したことがきっかけで、地元桔梗ケ原ワインのおいしさを再発見。その魅力をもっと広めたいと、2006年に「BrasserieのでVin」をオープンしました。


稲垣さんは、ワインバーを営みながらも、ワイン造りへの思いが強くなり、実家の畑でワイン用ぶどうの栽培を開始。2014年には、塩尻市が開講した「塩尻ワイン大学」の第1期生として、ぶどう栽培からワインの醸造、ワイナリーの経営まで、4年間かけて学びました。そして、塩尻市のワイン特区制度を活用した第1号として、2017年にワイナリーを設立したとのことです。

Kidoワイナリーと共に、稲垣さんのワイナリー「いにしぇの里葡萄酒」も、要チェックです。

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