土地の人から「神の島」と崇められる雄島の森を歩く


九頭竜川河口に臨む古くからの港町三国。東尋坊、越前松島、雄島など自然景観に恵まれ、越前加賀海岸国定公園の中核として、多くの観光客が訪れます。なかでも東尋坊は約1kmにも及ぶ勇壮な柱状節理が展開し、絶壁に日本海の荒波が打ち寄せるさまは実に豪快です。その東尋坊の北約1.5kmに、越前海岸では最も大きな島があります。

といっても標高27m、周囲2kmほどの島です。この雄島は約1200万年前に噴出した輝石安山石の岩石島で、海に臨んだ見事な柱状節理が見られます。土地の人は昔から「神の島」と崇めてきました。


島には漁港のある安島から朱塗りの橋が架けられ、歩いて渡れます。橋を渡りきると、島の入口となる鳥居があります。これをくぐり78段の石段を上ると、うっそうとした森が広がり、神秘的な雰囲気が漂います。石段を上りきった正面にはスダジイの林が広がります。その林の中にも、島の中央を通る遊歩道があります。しかし、まずは右回りに1周約1kmの周遊コースを歩いてみましょう。

歩き始めてすぐ、板根を持つタブの大木が見られます。これは表土が浅いためで、森の中の倒木の根を見ても、それがはっきり分かります。雄島は、今ではほとんど見ることの出来なくなった海岸沿いの原生林をまるごと残しており、いろいろな大木の幹がとても美しい島です。


やがて二又の道に出合いますが、右の道を選び海岸沿いを歩きましょう。この辺りはヤブニッケイの純林で、これは全国的にあまり例がなく、学術的にも貴重なものとされています。

ヤブニッケイの林を通り、海に向かって進むと、だんだんと明るくなってきます。雄島は常緑広葉樹の森で、中はうっそうとしてかなり暗いです。森から抜け出ると、まだ昼間であったことに気づくほどです。

海岸沿いの道では、左側に広がる森より、荒波が砕け散る右手の岩場に目がいきます。しかし、海に面した強い風により傾斜した風衝樹林帯などもあり、森からも目が離せません。

それを過ぎるとコオニユリの群生地があります。7月には岩場一帯に、美しい花の競演を見ることが出来ます。周遊コースを半周ほどすると、島の中央を通る遊歩道に再び出会います。ここで左折し、森の中を通ると、エノキやタブなどの大木があり、スダジイの林を通って最初の石段に出ます。周遊コースをそのまま進めば、岩場を通り、大湊神社へ向かいます。

大湊神社は701年の創建と言われ、源義経が海上祈願をし、兜一領を寄進したことが社伝に残っています。最後はやはりここに参拝。神社の境内には樹齢500年と樹齢300年の大きなタブの木があります。が、社周辺ばかりでなく、島全体を鎮守の杜と見た方が当たっています。

雄島は1000年の昔から、斧が入れられたことがないと言われます。それは「神が森であり、森が神である」という考えからきているのです。

※周辺は、北陸観光のメジャースポットの一つだけに、東尋坊や芦原温泉など、立ち寄る場所には事欠きません。それも比較的狭い地域に集中しているので、移動に困ることもありません。ちょっと珍しいところでは、花ラッキョウがお勧め。三国町の三里浜は、晩秋の訪れと共に可憐なピンクの花で埋まります。宿泊は三国にも温泉がある他、近くの芦原温泉に大型のホテルが整っています。

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