四季光彩 - 奥日光の自然美 その三

このブログのきっかけとなったのは、撮り貯めた写真の整理でした。過去にさかのぼって、ポジフィルムで撮ったものもスキャニングしてみたところ、奥日光の写真が非常に多くあることに、改めて気付きました。それも季節のいい新緑や紅葉の写真だけではなく、雪や氷の写真もあります。

そもそも、1年を通して奥日光に通うようになったのは、カメラマン氏からの提案でした。「四季のさまざまな色合いを風景写真で表現してみたい」。そう彼が言ったのが、始まりです。ただ、自然が相手だけに、モタモタしていると、思った色に出くわさない危険性もあります。北海道とか沖縄とか、ちょいと行って撮影するというわけにはいきません。

そこで一計を案じたカメラマン氏は、地理に精通するためにも撮影は東京近郊の一箇所で行うこととし、地形に変化があり、四季の表情が豊かな場所ということで、奥日光を選んだのでした。私はそれに同行することになり、1回目は12月の初旬にロケハンを兼ねて訪問。その後は毎月1回、通うことになり、新雪に腰まで埋もれたり、極寒の中ガタガタ震えながら日の出を撮影したり(その一、アカヤシオを目指して崖伝いに歩いたりと、なかなかどうしてハードな撮影行となりました。

でも、おかげでいろいろな表情の奥日光に出会うことが出来ました。今回は少し「四季光彩」の色に絞って、見ていきましょう。

 ◆

明智平
まずは、奥日光に春の訪れを告げるアカヤシオから。

アカヤシオはヤシオツツジの一種で、東北南部から紀伊半島の岩山などに自生しており、栃木県の県花になっています。奥日光では、いろは坂、明智平半月山などで多く見られ、だいたい4月下旬~5月上旬、つまりゴールデンウィーク中に見頃を迎えます。

カメラマン氏との撮影行では、明智平と半月山の両方で挑戦してみました。明智平の撮影では、崖伝いに移動してポイントを探していたのですが、この時、カメラマン氏はだいぶ危険な状態にあったようです。後に、彼が書いたエッセーに、次のような記述がありました。

「背負ったカメラ・ザックが、木の枝につかえて、先ほどから体の方向転換に四苦八苦している。スタンスが悪い。立っているのは、10cm四方しかない三角錐の突起部なのだ。崖の下は、垂直に落ちている。間違っても右方向には転落出来ない。

編集氏はどうした、どこにいるのだろう。助けを求めよう。

いた。上方の岩に腰を下ろし、普通では見られない華厳の滝の眺望をのんきに楽しんでいる様子で、私のことなど眼中にないようだ」

というわけで、どうやら私、カメラマン氏のことなど忘れ、眺望を楽しんでいたようです。今更ですが、ごめんなさい。

ところで、明智平には、あの明智光秀にまつわる伝説が残されています。詳しく書いていると、ブログがそれでいっぱいになってしまうので、興味のある方は電子雑誌「旅色 TABIIRO」の記事(【栃木】"明智平”にまつわる明智光秀を巡る伝説)を読んでみたらいかがでしょう。

ちなみに、日光の山野草を紹介している「四季の山野草」というサイトで、奥日光のアカヤシオの写真がたくさん掲載されています(※残念ながらSSL認証サーバーを使用されていないので、リンクが飛ぶかどうか分かりません)。それと、今年のアカヤシオ情報が、日光自然博物館のYoutubeページ「奥日光一分自然情報」で紹介されていたので、埋め込んでおきます。


 ◆

続いては、戦場ケ原自然研究路の真ん中辺りにある泉門池(いずみやどいけ)。湧き水による澄んだ透明な池で、周りの木々の色を映して、とても印象的な表情を見せてくれます。

戦場ヶ原

結構、大きな池で、周囲には椅子やテーブルも設置され、ハイカーがここで休憩したり、弁当を食べたりと、シーズンともなれば多くの人でにぎわいます。ただ、全景は意外と絵にしにくいので、切り取った方がいいかもしれません。


さて、冬でもいろいろな被写体がある奥日光ですが、冬場は赤沼から小田代ケ原、西ノ湖、千手ケ浜方面への低公害バスも運行していないので、これはもう歩くしかありません。低公害バスは例年、12月1日から4月後半のゴールデンウィーク直前まで運行停止となっているようです。また、赤沼駐車場も冬季は閉鎖されてしまうので、少し離れた三本松駐車場からのスタートを余儀なくされます。

柳沢林道

でも、世の中、好き者が多いらしく、結構足跡が付いているものです。そんな中、色がないようで、やはり冬にもちゃんと色はあり、日本の四季は本当に美しいなと気付かせてくれます。

 ◆

最後は、既に「その二」でも紹介した小田代ケ原。実は、カメラマン氏との撮影行は、最終的に1年の連載企画になったのですが、ややへそ曲がりのカメラマン氏は結局、その連載で小田代ケ原の写真は使いませんでした。厳密に言うと、最初にロケハンをした12月に山の影となって凍っていた原っぱの写真を使いましたが、かの有名な「貴婦人」は1度も登場しませんでした。

しかも、撮らなかったわけではなく、実は冬から春、夏、秋と、奥日光へ行く度に小田代ケ原を訪問し、貴婦人の撮影もしていたのですが、まあ、根があまのじゃくなんですかね。私だったら、素直に使っちゃうのに、と思ったものです。ただ、秋に訪問した際、早朝だと言うのに、それはそれはびっくりするぐらい大勢のカメラマンが詰め掛け、みんなして一本のシラカバを狙う様子を初めて目にした時は、正直ひいてしまいましたが・・・。

この年は、たまたま台風による大雨が何度か続き、湿原が池になるほどの雨量があったらしく、小田代ケ原には「幻の湖」が出現していました。それが北関東の新聞で報じられ、皆さん、それっとばかりに出掛けてきたそうで、何度も撮影に来ているという人から、池になるのは4年に一度くらいだと教えられました。まるでオリンピック。参加することに意義があるのかも、などと思ったものです。

小田代ケ原の四季

コメント

  1. 奥日光に通っていたのはいつ頃ですか?結構ハードなことをしていたんですね?!😰

    返信削除
    返信
    1. 若かりし頃でございます。今は、崖からおっこっちゃう・・・というか、そんなトコ敬遠します。新雪に埋もれながらの撮影行も、普段なら歩いて10分ぐらいの距離を1時間以上かけて進むという状態で、「八甲田山か!」と一人つっこんだり、「もういやっ! こんな生活」と世の中を呪ったりしたものです。。。

      削除

コメントを投稿

このブログの人気の投稿

悲しい歴史を秘めた南の島の麻織物 - 宮古上布

愛媛県南部の初盆行事 - 卯之町で出会った盆提灯

銘菓郷愁 - 米どころ偲ばせて「養生糖」 新潟県新発田

『旅先案内』都道府県別記事一覧

岩手の辺地校を舞台にした「すずらん給食」物語

上州名物空っ風と冬の風物詩・干し大根 - 笠懸町

越後に伝わるだるまの原型「三角だるま」

地域の復興に尽くすボランティアの母 - 八幡幸子さんの話

飛騨高山で味わう絶品B級グルメとスーパージビエ

日本最北端・風の街 - 稚内