神田にある老舗のあんこう料理専門店「いせ源」

いせ源
昨日、1856(安政3)年創業の居酒屋「鍵屋」について書きましたが(江戸時代から続く老舗居酒屋「鍵屋」)、今日はそれより更に古い料理屋「いせ源」の話です。かつて勤めていた編集部の忘年会を老舗シリーズにしていたことがあり、その一つが、1830(天保元)年創業の「いせ源」でした。

「いせ源」は、神田にある有名なあんこう料理専門店ですが、もともとは京橋にあった「いせ庄」というどじょう屋が前身だそうです。2代目の時に、京橋から神田に移転し、店の名を「いせ庄」から「いせ源」へ改めます。「庄」は初代の名前・庄蔵から取っており、改名後の「源」も2代目の名前・源四郎から取っています。

じゃあ「いせ」はというと、店主の名字は伊勢ではなく立川、更に三重県の出身でもないようで、話によると、江戸の名物「伊勢屋」の「いせ」を拝借したらしいのです。有名な噺のまくらに、江戸の名物があり、それには、「火事に喧嘩に中っ腹。伊勢屋、稲荷に犬の糞」と、「伊勢屋」が出て来ます。江戸の町には、それだけ「伊勢屋」が多かったわけですが、そんなブランドにあやかったのかもしれません。

いせ源 あんこう鍋

それはともかく、神田に移って「いせ源」として営業を始めた2代目は、どじょうだけではなく、あんこう鍋やよせ鍋、かき鍋、青柳鍋、白魚鍋など、さまざまな鍋を提供。その中で、あんこう鍋は、当時主流だったみそ仕立てから醤油仕立てに変えたことで、江戸っ子の胃袋を完全にわしづかみ。それはやがて、4代目があんこう鍋専門店にするほどの人気ぶりだったようです。

いせ源 あんこう唐揚げ

いせ源 あんこう きも刺し

いせ源 あんこう鍋おじや

定番のあんこう鍋の他にも、きも刺しや唐揚げ、煮こごり、とも和えなど、さまざまなあんこう料理が楽しめます。また、鍋のシメにおじやを作ってくれますが、これがまた旨いのです。

建物は、関東大震災で全焼した後、再建された当時のままのもので、東京都の歴史的建造物に選定されています。老舗にふさわしい佇まいで、大正時代の下町の風情をも伝えています。

ちなみに、老舗忘年会シリーズは他に、深川・森下にある馬肉料理専門店「桜鍋みの家本店」(1897[明治30]年創業)や、浅草にある牛鍋の「米久本店」(1886[明治18]年創業)などがありました。どちらも「いせ源」同様、雰囲気からしてすばらしいお店です。

みの家の桜鍋

米久の牛鍋


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