中国山地に囲まれた若桜町でジビエ三昧
若桜はまた、鳥取から姫路に抜ける播磨往来の宿場町として栄え、山陰と山陽の文化や物資が交錯していました。そんな若桜の町並みを取材した際、地元の方の計らいで、その方が所有する山小屋に泊めて頂きました。
食事も、何人かの町の方たちと一緒に、山小屋で鍋をすることになりました。鍋と言っても、そんじょそこらの鍋ではありません。熊鍋です。
他にも、イノシシやシカの肉も登場し、ジビエ三昧の夕食となりました。若桜は、周りがほとんど山だけに、猟師さんもたくさんいるらしく、地元の方は、普段からこれら山肉を食べているそうです。
私、東京生まれの東京育ちで、父方、母方の祖父母とも東京にいたため、子どもの頃から田舎に行く楽しみを味わうことなく過ごしてきました。なので、豚、鶏、牛以外の肉は、大人になるまで食べたことがありませんでした。特に、熊肉はほぼ食べる機会がなく、若桜で頂いた熊鍋が、これまでで唯一の熊食いとなっています。
そんな若桜のふるさと納税返礼品を覗いてみたら、ありました、ありました。鹿肉の生ハムにジビエカレー、ジビエの缶詰あれこれセット(鹿肉の大和煮、猪肉のすき焼き、猪肉の和風オイル漬け)の三つが選択出来るようになっていました。
で、説明を見てみると、「全国的にもトップクラスの品質を誇る若桜29工房の厳選鹿肉」「衛生的に処理された若桜29工房の猪肉」といった記載がありました。若桜29工房? 以前、若桜を訪問した時にはなかったような・・・。
というわけで調べてみると、「わかさ29(にく)工房」は、2012(平成24)年に若桜町によって設立され、翌年から本格稼働を始めた獣肉解体処理施設とのことです。更に16年には、指定管理者として「猪鹿庵(じびえあん)」を選定し、代表1名、食品衛生責任者1名、従業員2名、地域おこし協力隊1名によって運営をしているそうです。
山々に囲まれた若桜では、シカやイノシシによる農林業被害が多く、害獣駆除は年間約1000頭に及んでいました。そこで、これらの山肉を活用し、里山の恵みとして特産品に出来ないかとの思いで、解体処理施設を作ることになったのです。
幸い、若桜の猟師はベテランが多く、仕留めた後の血抜き処理も熟知しており、肉が非常にいい状態で工房に搬入されてくるそうです。しかも工房では、肉の搬入から50分ほどで枝肉にして、すぐに専用冷蔵庫で冷やします。こうしてスピーディーに処理することで、ジビエ特有の獣臭さや生臭さを防止しています。
わかさ29工房では現在、1日7、8頭、年間3000頭近いシカを受け入れており、本州では最も取り扱い量が多いそうです。イノシシも処理をしていますが、シカの10分の1程度。イノシシの方は、処理に慣れているのか、味に慣れているのか、猟師が自家消費する率が高いらしいです。シカ肉の納入先は、8割が県外で、関西と首都圏のレストランが多いとのことですが、道の駅「わかさ 桜ん坊」や、地元スーパー「サンマート」などでも販売しているそうです。1kgの販売単価は、ロースが3000円、スネやバラ肉は1000円。
なお工房は、県から衛生管理の国際基準「ハサップ」を満たした施設に認定され、農林水産省からは厳しい衛生管理基準の順守などが求められる国産ジビエの処理施設に認証されています。
ちなみに現在、日本では26の事業者が、国産ジビエ認証を受けていますが、熊肉を扱っている所はありませんでした。
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