立石寺 - 岸を巡り岩を這いて仏閣を拝す
当然、取材で訪れた山寺の1015段の石段なんざ、うれしいだけだったようです。その証に、東京に戻ってから、ネットで「日本一」と「石段」のキーワード検索をしてみたそうです。その結果、熊本県美里町にある金海山大恩教寺の釈迦院に通じる石段が、3333段で日本一だったとのこと。ちなみにこれは、1988年に完成したもので、それまでは山形県・羽黒山神社の参道2446段が日本一だったらしく、これらにも、いつか挑戦してみたい、と酔狂なことを言っていました。
何を隠そう、山寺へは私も2度ほど行っています。なので、行きはよいよい帰りは怖いじゃないですが、下りの方が膝にくるのを体験しております。そう言えば、前の記事に書いた愛知県新城市の鳳来寺表参道(私のルーツ旅その二 - 新城編)も、麓から1425段の石段が続く完全な山道でした。カメラマンの田中さんと私は、当然、参道入口で写真を撮った後、本堂近くまで車で移動しました。K嬢だったら、徒歩で石段にチャレンジしたかもしれません。
山寺は、正しくは宝珠山阿所川院立石寺と言います。清和天皇の勅願により860(貞観2年)に慈覚大師円仁が開山したと伝えられる天台宗の古刹です。荒々しい奇岩を露わにした岩山は、杉木立に覆われ、山腹に大小40余りの堂塔が建ちます。石段は鬱蒼とした緑の中を縫って、奥之院まで続いています。
山寺の登山口は、JR仙山線山寺駅から徒歩約7分。参道ではなく、潔く登山口と言っちゃってるところは好感が持てますが、それで石段の数が減るわけではありません。で、最初の石段を登り切った所に、国指定重要文化財である根本中堂があります。その側には、俳聖・松尾芭蕉像と、弟子の曾良像が立っています。芭蕉が、『おくの細道』の途次、ここを訪れたのは1689(元禄2)年の旧暦5月27日、太陽暦では7月13日のこと。そして芭蕉は、有名な一句「閑さや岩にしみ入る蝉の声」を詠みます。山門をくぐって、しばらく歩いた所にある「せみ塚」は、その句をしたためた短冊を埋め、石の塚を建てたものだそうです。
せみ塚の先には、阿弥陀如来に見立てた巨岩「弥陀洞」があり、見上げると、山寺のほぼ中間点となる「仁王門」を望むことが出来ます。仁王門をくぐると、いよいよ山寺の中核部分に入り、メインの奥之院や開山堂、納経堂、五大堂などがあります。開山堂は、慈覚大師の廟所で、その左のにある赤い小さなお堂は、写経を納める納経堂で、立石寺で最も古い建物です。舞台造りの五大堂は、五大明王を祭る道場で、ここからの眺めは爽快そのものです。
山寺登山は、ゆっくり上っても往復で2時間ほど。奥之院の手前には、冷たい飲み物がある「山頂売店」、また登山口と山寺駅の間は門前町になっていて、たくさんのお店が並んでいます。名物「山寺力こんにゃく」や芋煮、手打ちそばなどの門前グルメがあり、目移りするほどです。
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