石見神楽の豪華な衣装を制作する知的障害者施設


前の記事(八百萬の神々が滞在する出雲大社東西十九社を参拝)に書いた「神等去出祭」は1時間弱で終了。その後、宿を予約していた浜田市を目指してレンタカーを走らせました。出雲大社から浜田までは約100km。途中、江津道路というのがあり、大社から浜田まではほぼ2時間。19時過ぎに、浜田駅前のホテルにチェックインしました。 

食事は、ホテルから徒歩2、3分の「蓼」という店に。ここはオイルフォンデュが自慢らしく、それに乗っかり、ワインと一緒にオーダーしました。オイルがなじむまでウインナーや肉団子を食べ、キャベツなど水気が出るものは後回しに、と言われるがまま、食べ始めましたが、何のことはない、どれを入れても結構はねるのですな、これ。まあ、鍋や焼き肉感覚で、串揚げをするというのは初体験だったので、楽しく食事が出来ました。 

蓼 オイルフォンデュ

翌日は早起きをして、浜田から山の方に南下して、旧金城町へ。ここで知的障害者施設・桑の木園の収穫祭を取材しました。

浜田市金城町は島根県西部、北は広島県との県境を成し、山陰と山陽を結ぶ交通の要衝となっています。昔から石見神楽が盛んな土地で、「神楽の町」と呼ばれ、また日本近代演劇の父・島村抱月生誕の地としても知られます。

桑の木園 収穫祭

桑の木園は、1974年に知的障害を持つ子どもの親たちが、障害者が納得出来る施設を作ろうと、署名運動や募金活動を展開して設立されました。その母体となる「いわみ福祉会」では現在、障害者の就労支援として飲食業を始め、洋菓子、工芸品、園芸、農産品の製造販売を実施するなど、多角的な活動を実践しています。中でも異色なのが、「神楽ショップ くわの木」で作られている神楽衣装です。

金城に限らず、石見地方では神楽が盛んで、自治体の数だけ神楽団があると言われます。この石見神楽は、豪華絢爛な衣装も魅力の一つです。


しかし、1970年代から90年代にかけ、衣装や面を制作する職人が減少、需要に供給が追いつかない状況になりました。そこで、いわみ福祉会では施設の知的障害者がこの制作に参加出来ないか、と考えました。地域に伝わる神楽の伝統を引き継ぐことにもつながりますし、知的障害者が地域の役に立つチャンスにもなります。

模索するうちに、後継者不足で廃業せざるを得なかった職人から、直接技術の手ほどきを受けられることになりました。制作に必要な技術を、基礎からしっかり叩き込まれた神楽衣装作りは、徐々に軌道に乗り、売り上げは年間約1億円に達するまでになりました。

神楽衣装を作る人たちは、障害の程度や、技術の習熟度合いに応じて仕事が割り振られています。また、作業の様子を一般の人が見学出来るようにもなっています。障害を持つ人たちが、作業に打ち込む様子を多くの人に見てもらうことは、制作の励みにもなるそうです。

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