秋田県最古の温泉にある、ぜいたく公衆浴場


白神山地の岳岱(白神のブナ林を手軽に探勝出来る岳岱の森)を取材した帰り、盛岡目指して車を走らせている途中で「湯夢湯夢の里」という施設を発見しました。その少し手前に大滝温泉の看板があったので、温泉施設かと思い、ちょっと寄り道してみることに。

「湯夢湯夢の里」は公営の施設で、その一角に「湯夢湯夢の湯」という日帰り温泉施設がありました。で、「湯」が三つもあるこの施設、私はてっきり「ごむごむのみ」ならぬ「ゆむゆむのゆ」かと思ったんですが、正しくは「とむとむのゆ」でした。「とむとむ」が何の意味なのかは不明ですが、とりあえず利用させてもらうことにしました。

お湯は近くの大滝温泉から引いているらしく、源泉掛け流しのぜいたく公衆浴場です。内湯は御影石の浴槽で、熱い湯と適温の湯の二つがありました。小さいながら露天風呂もあり、こちらは57度の源泉掛け流しのため、かなり熱いお湯となっています。


大滝温泉は、秋田県最古の温泉だそうで、平安初期というから1200年以上の歴史があることになります。で、車で見た大滝温泉の看板には「鶴伝説のいわれの名湯」とあったんですが、それは次のような言い伝えでした。

ある日、村人が大滝を通りかかったところ草むらの中へ1羽の傷ついた鶴が舞い降りました。近寄ってみると、鶴がお湯に浸かっていました。そして数日後、傷がすっかり癒えた鶴が、元気に飛び立っていきました。それを見た村人は、これは神の授かりものだとして、この湯を「鶴の湯」と名づけ、近くに薬師堂を建てて住みつくようになったといいます。

大滝温泉のある大館市は、秋田県北部、出羽山地を縫って流れる米代川と長木川の清流沿いに開けた町です。明治時代から県北の政治・経済・文化の中心地で、秋田・青森・岩手3県の県庁所在地を結ぶ交通の要衝になっています。秋田杉などの天然資源を生かした木材業が盛んで、特に「大館曲げわっぱ」は国の伝統的工芸品に指定されています。


また「比内地鶏」の産地としても有名で、江戸時代には年貢として納められていた記録も残っているそうです。比内地鶏は、きりたんぽ鍋には欠かせない食材で、名古屋コーチン、薩摩地鶏と共に「日本三大美味鶏」の一つに数えられています。そのきりたんぽ鍋も、大館市が発祥地と言われ、大館の人たちは新米の季節になると家族や友人を自宅に招いて「たんぽ会」を開いたりするんだとか。そして毎年10月第2週の金・土・日曜日には「本場大館きりたんぽ祭り」が開催され、大館市民のきりたんぽ愛が満ち溢れる3日間となります。

もう一つ、大館で忘れてはいけないのが、忠犬ハチ公の古里だということ。渋谷駅のシンボルとして、今や世界中に愛されるハチ公は、1923(大正12)年11月に、大館市の斎藤義一さんのお宅で生まれました。ちょうどその頃、純系の日本犬を捜していた東京帝国大学の上野英三郎教授のため、教授の教え子が、部下の知人である斎藤さんの所から子犬をもらうことを思い付きました。そして24(大正13)年1月14日、生後50日前後の幼犬が上野教授の元へ送られ、「ハチ」と名付けられたのです。

現在、大館市には、秋田犬の歴史などを知ることができる「秋田犬の里」という施設があり、館内には「秋田犬ミュージアム」や「秋田犬展示室」などを併設、人気スポットとなっています。

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