なだらかな草原の中に灌木が点在する天空の広場

吾妻山 庄原市

以前のブログ(福山市民のソウルフード、大衆食堂「稲田屋」さんが閉店)にも書いたんですが、子どもの頃、同じ東京の小金井市に住んでいた従姉妹(母の妹の娘)は、私より一つ年上で、一人っ子の私にとって、姉のような存在でした。その従姉妹が、広島県庄原市の男性O君と結婚。彼と従姉妹は、安倍前首相と同い年、同じ大学の出身で、卒業後は東京と広島で遠距離恋愛を続けていました。彼は広島市内の会社に就職しましたが、数年後、実家の仕事を継ぐために庄原市へUターン。そのため従姉妹も、結婚を機に、庄原に住むことになりました。

そんな従姉妹夫婦が、結婚して間もないある冬の朝、広島市内のデパートへ買い物に出掛けました。庄原市から広島市の中心までは、90km近くありますが、車は順調に広島市内へ入り、デパートまではあとわずか。しかし、広島の街を走るうち、妙なことに気がつきました。

信号待ちで車が止まる度、道行く人たちが、皆こちらを見てくるのです。ご自慢のワーゲンゴルフではありますが、それほど珍しいわけでもありません。自分たちが、あまりにも素敵なカップルだからかしら。思い切りポジティブな従姉妹は、そう思ったそうです。


しかし、そうではありませんでした。その謎は、デパートの駐車場に車を入れて解けました。車の屋根に高々と雪を積んでいたのです。

広島県は、温暖な瀬戸内から、中国山地の厳しい寒さまで、バラエティーに富んだ気候を持っています。県東北部の庄原市は、西日本では最も寒冷な地域で、市街地でも例年20〜30cmの積雪があり、北部は豪雪地帯に指定されています。

庄原市の北端、島根県との県境にある比婆山連峰は、標高1200m級の山々が連なり、山頂付近は国の天然記念物に指定されているブナの純林に覆われています。最高峰は標高1299 mの立烏帽子山で、主峰比婆山(1264m)は、『古事記』に登場する、国生みの女神伊邪那美命が葬られた「比婆之山」と伝えられています。ブナ林の中にある円丘が、伊邪那美命の御陵とされ、一帯は「比婆山伝説地」として、県の史跡に指定されています。


また、比婆山の西にある吾妻山(1239m)も、人気の登山スポットで、山頂近くには国民休暇村「吾妻ロッジ」があったのですが、新型コロナウイルスの影響などで集客が低迷し、残念ながら最近、営業を終了してしまったそうです。実は私も、この休暇村に泊まったことがあって、当時は鉄筋2階建ての本館の他、貸別荘やキャンプ場がありました。休暇村では、比婆牛のステーキや、訪れた秋には地元でとれたキノコがたっぷり味わえ、とてもいい宿でした。

山頂までの登山道は、この休暇村の本館の横から始まっていました。天然芝の大草原を通り、なだらかな勾配を登っていくと、20分ほどで小ピーク小弥山に着きます。更に進み、岩の露出したやや急な登りを終えると、見晴らしの良い稜線に出ます。この辺りはレンゲツツジやヤマツツジなどの灌木に覆われ、5月から6月には、一帯が美しいお花畑となります。登山道は灌木の中をジグザグに山頂まで続きます。周囲の眺めもいいので、展望を楽しみながら登れます。


吾妻山山頂は、広々とした草地になっています。早朝には眼下に雲海が望め、壮大な景色が満喫出来ます。また、吾妻山には、原池、ひょうたん池、大池と三つの池もあって、まるで庭園を思わせる景色を形づくっています。

庄原市にはこの他、中国地方有数の景勝地・帝釈峡にあるアーチ状の天然橋「雄橋」や、ポプラ並木が美しい、日本最古の官営牧場「七塚原牧場」があります。雄橋は、長さ90m、高さ40mの壮大さで神の橋とも言われ、似たような規模と構造、歴史を持つアメリカ・バージニア州のロック・ブリッジと双璧をなす天然橋とされます。七塚原高原は、1900年に日本で初めての国立種牛牧場が創設された所で、以来、畜産の試験研究機関として歴史を重ね、現在は県立畜産技術センターとして畜産の研究が進められています。


そんな自然豊かな庄原に住む従姉妹は、日本さくら名所100選に選ばれ、夜桜の美しさは西日本有数と言われる上野池を望む場所で、「暮らしのアトリエ」を運営。ちょっとオシャレでエコな植物活用術を提唱しています。上級ハーブインストラクターの肩書きも持っており、我が家にも時々、手作りのハーブソルトを送ってくれます。ちなみに、従姉妹の長男は、有名な寿司ブロガー(https://sushi-blog.com/)として活躍。時々、テレビにも登場しており、従姉妹の夫O君は、息子が「マツコの知らない世界」に出る日を待ち望んでいるそうです。

暮らしのアトリエ

コメント

このブログの人気の投稿

悲しい歴史を秘めた南の島の麻織物 - 宮古上布

愛媛県南部の初盆行事 - 卯之町で出会った盆提灯

銘菓郷愁 - 米どころ偲ばせて「養生糖」 新潟県新発田

『旅先案内』都道府県別記事一覧

岩手の辺地校を舞台にした「すずらん給食」物語

上州名物空っ風と冬の風物詩・干し大根 - 笠懸町

越後に伝わるだるまの原型「三角だるま」

地域の復興に尽くすボランティアの母 - 八幡幸子さんの話

飛騨高山で味わう絶品B級グルメとスーパージビエ

日本最北端・風の街 - 稚内