ソースカツ丼発祥の店ヨーロッパ軒総本店を訪問

足羽川桜堤
ある時、シカゴの知人から、イリノイ州にある財団が、福井市の施設にスヌーズレンを導入する支援をしたので、実際に使っているところを見て、リポートしてくれと依頼がありました。

スヌーズレンというのは、重い知的障害がある人たちのためにオランダで考え出された活動と理念です。そして、その実践のために作られたのがスヌーズレンルームで、室内は障害を持つ人が楽しめるよう、光、音、匂い、振動など、感覚に直接訴えるものを組み合わせたトータルリラクセーション空間となっています。

多くの人は、音楽で癒やされたり、スポーツや習い事を楽しんだりと、さまざまな形で余暇を過ごしますが、重度の知的障害を持つ人たちの中には、自分からそうした刺激を求めることが難しい人がいます。スヌーズレンルームは、それらの代わりとなる娯楽だと考えれば分かりやすいかもしれません。

取材で部屋を見学させて頂いた時、スヌーズレンを利用していたのは知的障害を持つ児童一人と、自閉症の少年二人でした。自閉症の二人は社会への適応や他人とのコミュニケーションが苦手で、普段は施設の職員さんたちも対処に困るほどだと聞きました。しかし、それぞれお気に入りのウォーターベッドとボールプールを使う二人を見ていると、本当に重度の自閉症なのかと疑いたくなるほどでした。

スヌーズレン
ただ、人によっては装置の得手不得手があるようです。例えば匂いに敏感な人は部屋に漂うアロマを嫌ったり、光に過剰反応する人は視覚を刺激するバブルユニットがだめだったり、スヌーズレンによって苦手分野が分かることもあります。その場合、苦手なものを自分や家族が理解して、それを回避するよう対処することも出来ます。また、部屋では職員も一緒に楽しむため、子どもたちとより一層良い関係が構築出来るようになったという話を聞きました。

欧米ではスヌーズレンが、コミュニティーセンターや保育施設にまで広がっています。日本ではまだ一般の認知度は低いものの、知的障害者施設を中心に導入が進んでおり、私がインスタグラムでフォローしている春日部市の障がい者生活介護事業所でも導入されています。今後、更に広がっていくといいですね。

 ◆

ところで、福井を訪問したのは4月3日でした。ちょうど、日本さくら名所百選の一つになっている足羽川の桜が満開を迎えており、施設見学の合間を縫って桜も撮影してきました。また、夜はライトアップをしていると聞き、ホテルに戻った後、再度出掛けてみました。

足羽川桜堤ライトアップ

正直言うと、ライトアップにはあまり興味はないのですが、足羽川河畔の夜桜は結構ゴージャスな雰囲気でした。で、川沿いのホテルから桜並木をふらっと散歩して、途中で見つけた「旬味 泰平」という店で夕食。どれもおいしくて、あたりでした。ホントは白子焼きが食べたかったんですが、高いので焼きシイタケにしたものの、これもおいしかったです。

旬味 泰平

後で聞いたら、この辺は明治時代、高級料亭が立ち並んでいたエリアで、「浜町」と呼ばれているそうです。店構えが町並みに馴染んでいたので、老舗かと思いきや、実はそうでもないようで、大阪の有名割烹店で修行を積んだご主人が、古民家を改装して開業したとのこと。夜は必ず予約しておくのが賢明なほどの繁盛店らしいのですが、桜が満開のこの時期に、すんなり入って食事が出来たのは、かなりラッキーでした。

福井ではもう1軒、狙っていた店がありました。ヨーロッパ軒総本店です。

足羽川桜堤

「福井に行ったらヨーロッパ軒」と、最初から狙いを定めることになるきっかけは、2007年の富山でした。この時、敦賀のSNさん、ライターの砂山さんと共に、富山在住の友人NYさんの案内で、富山のおいしい魚と日本酒を堪能させてもらいました。で、話をはしょりますが、何かの弾みにNYさんが、「これを食べずには死ねない」と言い、敦賀のSNさんが激しく同意したのが、福井のパリ丼でした。

パリ丼に関しては、明日、別記事を立てますが、帰宅してから調べてみると、「これを食べずには死ねない」メニューを出しているのはヨーロッパ軒という店でした。しかも、このヨーロッパ軒、ソースカツ丼発祥の店だというのです。更には、私が高校、大学と通った東京の早稲田で創業し、関東大震災で被災した後、郷里の福井に帰って店を再開したとのこと。


そんなわけで、ずーっとヨーロッパ軒訪問を念願していたのですが、なかなか福井へ行く機会もなく、いたずらに時は過ぎていきました。初ヨーロッパ軒は、それから2年ほど経ってからでしたが、それは敦賀本店で、食べたのはもちろんパリ丼。この段階では、ソースカツ丼は食べていませんでした。

そこで、この機会に発祥の店で、ソースカツ丼を食べてみようと算段したわけです。ヨーロッパ軒総本店のサイトによると、こちらのソースカツ丼は「薄くスライスした上等のロース・モモ肉を、目の細かな特製パン粉にまぶし、ラード・ヘッドでカラリと揚げたカツを、熱々のうちにウスターソースをベースに各種の香辛料を加えた秘伝のタレにつけ、熱いご飯にタレをまぶした上にのせたカツ丼」とのこと。なお、ソースのレシピは企業秘密ながら、早稲田時代はブルドックソースにレシピを教えて作ってもらっていたものを、福井に移転してからはイカリソースに同じレシピで製造を依頼しているそうです。

ヨーロッパ軒総本店アイスクリーム

ちなみに、福井市のヨーロッパ軒総本店を訪問したのは、消費税が5%から8%に上がった2日後でした。で、私が食べたソースカツ丼セットは1080円、アイスクリームは210円でした。もしかしたら、良心的に切り捨てたのかもしれませんが、時期が時期だけに、消費税が混在している感じでした。

関連記事→「ヨーロッパ軒敦賀本店で念願のパリ丼を食す」

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