真室川音頭の町で開かれる仮装盆踊り大会
真室川町で、仮装盆踊りがあることを聞きつけ、取材に出掛けたのは2017年の8月でした。真室川は山形県北部、雄勝峠を通る奥羽本線や国道13号によって秋田県と結ばれています。東京からだと山形新幹線で新庄駅まで行き、そこで奥羽本線に乗り換えて2駅、新庄からは15分ほどで到着します。横手の記事(「雪国の叙情あふれる小正月行事 - 横手のかまくら」)に、横手までのアクセスルートを三つ紹介し、距離は最も短いけど一番時間がかかると書いた「山形新幹線・奥羽本線ルート」です。
真室川の仮装盆踊りは、真室川まつりの前夜祭として行われ、同時にこの日から、特設会場でビアパーティーが開催されたり、手作りの灯ろうが伝統芸能「釜淵囃子」と共に町を練り歩く動く灯ろうが実施されたりします。真室川まつりは例年8月17日に開催され、山神神社の勇壮な神輿渡御や真室川音頭パレードが行われ、夜には約2500発の花火を打ち上げる真室川まつり花火大会でフィナーレとなります。
仮装盆踊り大会は、真室川駅前に櫓が組まれ、駅ロータリーが盆踊り会場に変身。踊りはもちろん、真室川音頭。 そう、まつり本番でも、生唄生演奏で町民約500人が踊りながら町を練り歩く真室川音頭パレードがあるように、真室川と言えば、真室川音頭を忘れてはいけません。
真室川町のウェブサイトによると、真室川音頭の由来は「明治時代に遠く千島やカラフトへ出稼ぎにわたった人々が歌った『カムチャッカ節』を元唄に、真室川町に住んでいた近岡ナカエさんが創作して歌ったのが始まりと言われています」とのこと。また「全国的に広まったのは、昭和の始めに隆盛をほこった真室川鉱山に働く人々に盛んに歌われ、戦後『真室川小唄』としてリバイバル。さらにレコード化されたことにより、全国的に歌われるようになりました」ということになっているようです。
ただ、一応諸説があるようなので、ちょっとだけ検索してみると、源流として有力なのは、明治の頃、北海道や樺太の缶詰工場で働く女工たちによって歌われた労働歌で、その原曲は、樺太や千島で歌われていた「カムチャッカ小唄」だそうです。そして、これがお座敷唄となって、合いの手で「ナット ナット!」と囃すことから「ナット節」と呼ばれるようになり、更に大正の末頃から本州の港町でも歌われるようになったようです。
内陸部である真室川出身の近岡仲江さんが、「ナット節」と出会ったのは、サンマやタラ漁が盛んな宮城県女川町でした。近岡さんは、昭和2年頃から女川の料亭で働いており、ここで常連客から「ナット節」を習いました。その後、故郷に戻った近岡さんは、「ナット節」を改変したものを、働いていた料亭「山水」で歌い、それが「山水小唄」と呼ばれるようになりました。
当時は、真室鉱山が興隆を誇り、昭和7年に始まった真室川軍用飛行場建設もあって、町は鉱山関係者や飛行場建設に携わる人たちで賑わい、「山水小唄」は山水を始めとした町内の料亭を通じて歌い広められました。そして、その中の1軒、料亭「紅屋」の女将・佐藤ハルさんが、歌詞や三味線弾きの体裁を整え、「真室川小唄」として完成させ、それが、鉱山や飛行場建設の出稼ぎ者だったり、陸軍航空隊所属の兵士らによって全国に広まったとされます。
現在の歌詞は、昭和27年に町が公募したもので、正調「真室川音頭」と呼ばれ、レコード化されました。また、翌昭和28年には、真室川音頭保存会が発足、真室川まつりの真室川音頭パレードや真室川音頭全国大会などに携わり、地元の小・中学校の児童生徒へ指導を行うなど、真室川音頭の保存・継承に努めています。
その真室川は戦後、人口が急増。昭和30年頃までは町民が1万7000人を超えていました。しかし、その後は減少が続き、現在は8000人弱と、ピーク時の半分を割っています。真室川まつりも年々人出が減り、寂しい盆踊りになっていました。そこで町の活性化のため祭りを盛り上げようと始まったのが、仮装盆踊り大会でした。
さて、仮装盆踊り大会は、真室川駅前広場で行われたため、取材は駅周辺だけ。盆踊りが終わったら、宿を取ってある新庄駅までトンボ帰りする予定でした。しかし、終了後、仮装盆踊りに参加したグループから、新庄まで車で送ってあげるから、と誘われ、駅前の居酒屋「半四郎」で、なぜか地元の踊り手の打ち上げに参加。
そこで聞いたのですが、梅まつりが開かれる真室川公園近くのラーメン屋さんが抜群においしいそうです。「梅の里ラーメン大吉」という店で、真室川で30年以上続く老舗のラーメン屋さん。動物系スープに大量の野菜を加えて甘みを出し、数種類の昆布と厳選したさまざまな乾物を合わせた「大吉特製スープ」に、かんすい控えめの自家製ちぢれ麺を使っているとのこと。
残念ながら時間がなく、またご主人(庄司吉光さん)も真室川まつりで忙しかったらしく、実食出来なかったのですが、後でGoogleのクチコミを見ると、味はもちろん「接客がとても気持ちいい」という声が多数寄せられており、機会があったら、ぜひともお邪魔してみたいと思っているところです。
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