フォトジェニックな沼田の風景 - 吹割の滝、玉原湿原、上発知のしだれ桜
前のブログで、「はじめての親子孫3世代旅行」について書きました。目的地は群馬県沼田市で、老神温泉に泊まり、上発知の果樹園でりんご狩りなどをして楽しみました。
その沼田市へは以前にも、仕事で何度か行っています。最初に行ったのは、1999年のことで、「天狗の寺」として知られる迦葉山弥勒寺(かしょうざんみろくじ)や、沼田まつりで女衆が担ぐ「天狗神輿」などを取材しました。
なぜに天狗なのかは、後述するとして、実は、孫がりんご狩りをした果樹園「香里園」(かおりえん)は、迦葉山のふもとの「天狗の里フルーツ団地」にあります。で、弥勒寺や香里園がある上発知には、その名も「上発知のしだれ桜」と呼ばれる美しい一本桜があり、この桜を撮影するため、沼田を訪れたこともあります。それが2013年のことで、今回の家族旅行はそれ以来の沼田行きでした。
残雪の武尊を背景に枝を広げる上発知のしだれ桜 |
上発知のしだれ桜は、木の下にお地蔵さんがあることから、「地蔵桜」とも呼ばれています。桜の木は、小さな丘の上にあり、さまざまな角度から撮影出来るため、開花時期には多くのアマチュア・カメラマンでにぎわいます。
沼田市教育委員会が設置した案内板によれば、樹高17m、幹周り3.7mとのこと。開花時期は例年だと、4月中旬から下旬にかけてで、ここに掲載した写真を撮影したのは4月22日でした。
ちなみに、沼田ICから香里園までは約8km。実は、その少し手前には「発知のヒガンザクラ」と呼ばれる一本桜もあります。ただ、こちらは開花時期が、上発知のしだれ桜より、5~10日ほど早いようで、一緒に撮影するというわけにはいきません。
で、香里園から上発知のしだれ桜までは約2km、沼田ICからなら約10kmということになります。
そして、上発知のしだれ桜から北上すると、4kmほどで迦葉山弥勒寺に着きます。弥勒寺は、標高1321mの迦葉山南腹にある曹洞宗の古刹です。寺には、顔の丈5.5m、鼻の高さ2.7mという、日本一の大天狗面が安置されています。この寺は天狗信仰の寺として知られ、他にも大小さまざまな天狗面が奉納されています。
弥勒寺はもともとは853(仁寿3)年、慈覚大師円仁の創建と伝えられ、天台宗に属していました。しかし、1456(康正2)年、天巽慶順禅師が入山して再興、この時、曹洞宗に改められました。
伝説では、禅師入山の際、中峰という僧が、禅師に従ってやって来ました。中峰は怪力を発揮して土木工事を行い、また布教伝導にも努力しました。その中峰の童顔は数十年の間、少しも変わることはありませんでした。が、天巽禅師が二世の大盛禅師に住職を譲ると、中峰は「実は私は迦葉の化身である。なすべきことは終わったので、昇天して末永く寺を護り、衆生のために尽くすであろう」と告げて飛び去りました。そして、その後には天狗面が残されていたといいます。
この伝説がもとになり、弥勒寺は山内守護として中峰堂に天狗様を祭っています。養蚕豊作、商売繁盛にご利益があると、関東一円の信仰を集め、たくさんの講も結成されています。中峰堂の中には「お借り面」として天狗面が置かれ、参詣者は願い事があると、それを一つ借りて帰ります。そして願いがかなったら、参道沿いの茶店で「お返し面」を買い、二つにして返すという習わしがあります。
天狗の取材をした際、上発知にある生方工芸てんぐ面製造所で、天狗面をつくるところを撮影させて頂きました。鬼の面は各地にありますが、天狗の面は全国的に見ても珍しいものになっています。取材当時は、群馬県指定ふるさと伝統工芸協会会員でもある生方敏男さんを始め、製作者が4人おり、創業当時から変わらぬ手作業で天狗面をつくっていました。
さて、弥勒寺を下り、県道266号に戻って、更に北へ10kmほど行くと、「小尾瀬」と呼ばれる玉原湿原があります。何を隠そう、沼田に初めて興味を持ったのは、この玉原湿原の存在でした。
だいぶ前のことですが、『旅』という雑誌で、「身近な秘境」という特集があり、美しい風景写真と共に沼田市の玉原湿原が紹介されていました。この記事で、玉原湿原のことを「小尾瀬(こおぜ)」と表現していたのです。
古い家並みや景観が残る町を小京都(しょうきょうと)とか、小江戸(こえど)と呼びます。玉原湿原もそれと同様、植生や風景が尾瀬に似ているところから、小尾瀬と呼ばれているのです。
湿原には春から秋にかけて、ミズバショウやワタスゲ、タムラソウなど、多くの植物が咲き乱れます。尾瀬同様、木道が整備され、1時間ほどで回れるコースも設けられています。
また、周辺にも玉原湖や玉原高原など、四季折々の自然が手軽に味わえるスポットがあります。この記事に掲載した写真は、玉原ラベンダーパーク(冬はスキーパークに変身)で撮影したもので、7月中旬~8月中旬、北海道の富良野から株分けされた5万株が斜面を彩ります。この時期、リフトも運行されているので、眼下のラベンダーを眺めながら空中散歩を楽しむことも出来ます。
少し話が脱線しますが、「小○○」の「小」は、「大きい」「小さい」ではなく、明治初期の新聞業界用語「大新聞(おおしんぶん)」、「小新聞(こしんぶん)」からきています。そのため本来は「小京都」も「こぎょうと」と呼ぶのが正しいようです。ちなみに大新聞は政治をテーマとした論説が中心で、小新聞は江戸時代の瓦版を継承し、三面記事を中心にしていました。小新聞の始まりは、明治7年に創刊された『読売』新聞で、現在の大手『読売』『朝日』『毎日』は全てこの小新聞の系譜になります。
ところで、本家の尾瀬は、上発知や玉原方面の県道266号ではなく、沼田ICから東へ向かう国道120号を利用します。その途中、沼田ICから約14kmの辺りに老神温泉があります。また、老神温泉から4kmほど進むと、「東洋のナイアガラ」と称される吹割の滝に出ます。
吹割の滝の落差は7mしかなく、数字だけ見ると大したことがなさそうですが、横幅は30mもあり、ナイアガラ同様、横に長い滝ということになります。
吹割の滝は、900万年前の火山噴火によって噴き出した火山灰が固まった岩石からなり、長い年月をかけ浸食を繰り返した末、およそ1万年前に現在の形になったとされます。周辺には遊歩道も整備され、吹割の滝以外にも観音堂や橋、名前の付いた岩など、多くの見所があります。また、最近ではパワースポットとしても注目されているようです。
滝の入口には、土産物店やドライブイン、レストランなどが軒を連ね、この辺りで最大の観光スポットであることを物語っています。
ここから10kmほど先に進んだ辺りに、尾瀬方面への分かれ道があります。尾瀬へ行く場合は、その分岐点を左折し、国道401号に入ります。逆に、そのまま国道120号を進むと、日光白根山ロープウェイセンターステーションや、丸沼、菅沼などがあり、更に進むと、金精峠を越えて、奥日光へ出ることが出来ます。
金精峠のすぐ下には、記念すべき最初のブログ(「四季光彩 - 奥日光の自然美 その一 」)に書いた湯ノ湖があり、峠からは、その先の戦場ケ原や男体山を望むことが出来ます。
都知事の5つの「コ」は「小」から来ているんですよね(笑)
返信削除お地蔵さんと桜の写真はL誌の表紙になったことがありましたよね。もう撮り貯めた表紙の写真はなくなったのでしょうか。
都知事のフリップ芸は、ほとんど進歩がないように思えます。得意顔で「ウソみたいな話」と会見をしたイソジン府知事よりは多少ましかもしれませんが・・・。
削除もうストックはありません。なんせ今回の沼田行きは、昨年11月中旬に帯広と大樹町で取材した時以来、1年ぶりの旅行でした。リタイアで夢見ていたのは、昼呑みと風景写真の撮影行だったんですが、どちらもコロナ禍で実現していません。