小布施取材で出会ったもの、出会えなかったもの

 

小布施栗

小布施と言うと、普通は栗なんですが、私の場合、以前のブログ「日本ワインの革命児・ウスケボーイズを探して」に書いた、小布施ワイナリーのある町としても認識していました。「ウスケボーイズ」は、岡本英史さん(ボー・ペイサージュ/山梨県須玉町)、城戸亜紀人さん(Kidoワイナリー/長野県塩尻市)、曽我彰彦さん(小布施ワイナリー/長野県小布施町)の3人で、ボー・ペイサージュの津金ワイン、Kidoワイナリーの城戸ワインは飲む機会があったのですが、小布施ワイナリーのドメイヌソガだけは、出会いがありませんでした。

しかし、2016年秋、取材で小布施に行く機会があり、せっかくなので小布施ワイナリーにもお邪魔しようか迷ったものです。しかし、小布施の町はとてもコンパクトで、取材は徒歩で行っていたため、駅から約1.5kmの小布施ワイナリーを訪問すると、試飲時間や往復の時間などを考えると、取材に支障を来すことになりそうで、諦めました。

小布施栗
さて、その時の取材対象は、王道の栗と北斎、そしてオープンガーデンでした。

小布施の栗は超有名ですし、義母、義姉と旅行をしてきた家内からも話を聞いていたので、情報はばっちりでした。しかも、神戸の友人・Dさんが、小布施のTwitterアカウント「おぶせくりちゃん」のツイートにいいねをしたり、リツイートをしていたので、Twitterからの情報も得ていました。ちなみに、「おぶせくりちゃん」については、私もついつい出来心でフォローしてしまい、時々、タイムラインに「何々クリ〜♪」というツイートがあふれかえる事態に陥ったりしていました。

で、栗に関しては、小布施で最初の栗菓子である栗落雁を創製し、200年以上の歴史がある桜井甘精堂さんの協力で取材を進めました。桜井さんによると、「現代は菓子店には生きにくい時代なんです。競争相手はコンビニスイーツで、大手の会社が開発しただけあって確かにおいしい。そんな中、小布施は栗に特化したことで、分かりやすい町づくりに結び付いたんじゃないかと思います」とのこと。

小布施町は、半径2kmの円にほとんどの集落が入る小さな町で、その中に栗菓子の名店が軒を連ね、側には栗農園もあって、小布施の町全体が栗のテーマパークのようになっています。更に主な栗菓子店は全て自前の美術館や博物館を持っていて、それもまた小布施巡りの楽しみの一つになっているようです。

桜井甘精堂
桜井甘精堂の栗おこわ


また、取材でも取り上げたオープンガーデンは、2016年の段階で130軒ものお宅や店舗、学校などが参加。丹精込めて作り上げた自分たちの庭を一般に公開していました。

普通に考えると、どこの誰とも分からない人間が、ずかずかと庭に入ってくるわけですから、出来れば敬遠したいところです。しかし、小布施の人たちは、そんな否定的な考えは持たずに、前向きに町づくりの一つとして取り組んできました。

八方睨み鳳凰図
葛飾北斎最晩年の作と伝えられる岩松院本堂の天井絵
地元の方の話だと、小布施には古くから、「お庭ごめん」という文化があって、他人の家の庭でも普通に通り抜けていたそうです。「外はみんなのもの。内は自分たちのもの」という考え方で、それぞれが自分の庭を解放し、お互い便利に抜けられるようにしていたとのことです。

実は、町長の家もオープンガーデンになっていました。町長夫人である市村多喜子さんが、普段からこまめに手入れをしている庭でした。ここも、多喜子さんにお断りして撮影させて頂いたのですが、玄関横にビールサーバーが置かれているのが気になりました。

後で聞いてみると、誰でも自由にこのビールサーバーを使ってビールを飲んでいいそうなのです。むむむ、それが分かったからには、次からは遠慮無く・・・とほくそ笑む私でした。

ところで、小布施取材の際は、まさに栗のシーズンだったため、小布施の町は観光客でいっぱいでした。そのため、カメラマンの田中さんと私は、お隣の須坂に泊まりました。この須坂駅からホテルへ向かう途中に、割烹加治川という店があり、他には店らしいものが見当たらなかったこともあり、夕食はここで取ることにしました。

このブログで、小布施ではない、お隣の須坂のことを書くのはどうかとも思いましたが、ここのカツ丼が衝撃的だったので、やっぱり触れずにおくというわけにはまいりません。メニューを見ると、普通のカツ丼も、ソースカツ丼もあるんですが、いの一番に載っているのは「加治カツ丼」でした。そして、その上に赤文字で「特製タレ」とあります。

B級グルメ大好き人間の私、当然のことながら、加治カツ丼をオーダー。これはカツの枚数を選ぶことが出来、メニューには3枚か4枚となっていました。今でこそ、野球にほとんど興味がない私ですが、何を隠そう、子どもの頃からずっと長嶋ファンでした。そのため、数字では3が好きなのです。となれば、ここはやはり3枚ですよ。というわけで、出て来たのが、キャベツの上に、三角錐のように立てられた3枚のカツたちでした。

カツ自体は薄切りで、タレは醤油ベース。見栄えといいタレの味といい、人に言わないではいられないカツ丼でした。そんなわけで、小布施の記事に、須坂を紛れ込ませてしまいました。

最後にもう一つ、翌日の朝食は、オープンガーデンの撮影に協力して頂いた樋田正彦さん(オープンガーデン63)の親族が営む古民家カフェ「珈茅(こち)」で頂きました。ここは、朝の7時から営業されており、メニューは主にコーヒーとサンドイッチ、それにスープです。私が食べたのは、右の写真にある、ロースハムとたまごサンドセットでした。

取材記事→「栗と北斎と花のまち。北信濃の観光地を歩く - 小布施

コメント

  1. 小布施の栗って、本当に美味しいですね。大ファンです。

    お庭ごめんって面白い風習ですね。アメリカでやったら射殺されそうですけど。

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    1. 家内も、栗の季節になると、また行きたいと言っています。モンブランを食べたいみたいです。

      どこに誰が住んでいるのか、知っているような小さな町だからこそ、よその家の人が勝手に庭をショートカットに使っても安心していられるんでしょうね。

      削除

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