ユネスコ無形文化遺産・三社大祭の古里で朝ごはん
毎年7月31日から8月4日までの5日間、八戸の街が祭りの熱気に包まれます。この期間の人出は100万人以上。それが、およそ300年の歴史と伝統を誇る、国の重要無形民俗文化財「八戸三社大祭」で、2016年にはユネスコ無形文化遺産「山・鉾・山車行事」に登録されました。
三社とは、法霊山龗(おがみ)神社、長者山新羅神社、神明宮の三つの神社のことで、見どころはこれら三社の神輿行列と、神話や歌舞伎などを題材に各山車組が毎年製作する27台の山車の合同運行です。山車は高さ10m、幅8mもあり、夜の運行ではライトアップされた山車が夜空に浮かび上がり、より一層、豪華さを増すことになります。
一昨年、この三社大祭を見る機会がありました。青森県八戸市吹上にある独立行政法人国立病院機構八戸病院に、八戸三社大祭の山車が訪問する様子を取材するためでした。
八戸病院は1934年に八戸市立結核療養所として創設され、47年に国立八戸療養所として発足。その後69年に重症心身障害児病床を併設、予防法や治療法の発達で結核発症が大幅に減ったことを受け、2003年に結核病棟を閉鎖し、翌年から独立行政法人国立病院機構八戸病院として、国が担うべき医療と定められた政策医療分野の一つ、重症心身障害の専門医療施設となりました。現在、リハビリテーションを含め、約150人の重症心身障害児(者)が入院しています。
訪問活動をアレンジしているのは、八戸中央ライオンズクラブで、八戸病院の嘱託医として入院患者の診療を担当する会員らの提案により、約50年前から実施しています。当初は、入院患者たちを三社大祭の見学に招待していましたが、患者の中には重い身体的な障害を持つ人も多いことため、4年目には山車の方から病院に来てもらうことを計画。会員が関係する山車組に依頼し、病院への三社大祭山車訪問が実現することになりました。その後、十数年前から、病院と同じ町内の吹上山車組が協力してくれるようになり、毎年欠かさずに三社大祭の山車訪問が続いています。
吹上山車組は、山車審査で常に上位を占める有名山車組で、2016年までは10年連続最優秀賞を受賞したこともあります。吹上山車組の方の話では、山車の製作は例年、5月の連休明け頃から始めるそうです。しかも、青森ねぶたなどと違い、八戸三社大祭の山車製作には山車組関係者自らが当たり、本業を終えてから集合して作り上げるのだといいます。山車のベースはユニッククレーン付きの4tトラックで、多くは前部と中央部が横に展開し、後部がせり上がるなどの仕掛けが施されています。
八戸病院の訪問では、それらの仕掛けがフルで披露され、しかも細工物なども間近で見ることが出来ます。祭り4日目の朝に行われる山車訪問の日、入院患者や家族、病院関係者らは、笛と太鼓の軽快なお囃子が流れる中、豪華絢爛たる山車を笑顔で見上げていました。そして、患者さんの表情からは祭りの高揚感さえ感じられました。地元の誇りである祭りの雰囲気を味わえる、貴重な機会だということが分かりました。
陸奥湊の魚菜市場 |
三社大祭が行われる八戸市は、青森市や弘前市と共に、青森県主要3市の一角を成します。ただ、青森、弘前が旧津軽藩だったのに対し、八戸は旧南部藩になり、日本海側の津軽と太平洋側の南部で気候が異なる上、文化もだいぶ違うようです。前のブログ(福山市民のソウルフード、大衆食堂「稲田屋」さんが閉店)で、同じ広島県でも広島を中心とした安芸と、福山を中心とした備後の違いを書きましたが、青森県の津軽と南部も同じ様相を呈しているみたいなのです。
それはともかく、私、以前はそのことを知らず、恥をかいたことがあります。実は、編集部のK嬢は八戸の出身なんですが、ある時、カメラマンのI氏と盛岡で取材した後、八戸に立ち寄ったことがあります。その際、K嬢のお父さんが、車で種差海岸などを案内してくれることになりました。そこで私、何か手土産をと、盛岡で南部せんべいを買って持って行ったのですが、後で八戸も南部だと知り、地元のお菓子を持って行ったことに気付いたわけで・・・。全く、穴があったら入りたいような気持ちでした。
さて、そのK嬢の実家は、陸奥湊駅の近くにあります。ここは、港町八戸の風情を最も感じさせてくれる場所です。陸奥湊は八戸と岩手県の久慈を結ぶ八戸線の駅で、八戸漁港まで歩いて10分ほどの所にあります。駅前には市営魚菜市場を中心に、大小の市場や商店が軒を連ね、この通りで開かれる朝市は、八戸の台所と呼ぶにふさわしい賑わいを見せます。
三社大祭山車訪問の取材時、田中さんと私は、ホテルは泊まるだけにし、朝食はこの魚菜市場で食べることにしました。市場の朝は早く、午前2時前からシャッターが開き、3時には店開きの準備が整います。通りが最も活気づくのは4時から6時頃で、仕入れの軽トラックや、急ぎ足で荷を運ぶ人、籠を背負った買い物客などが通りを忙しく行き交います。
もちろん、そんな早朝から朝食を取るつもりはないので、我々は少し落ち着いた時間帯を見計らって、陸奥湊駅に到着しました。駅前では、左手にイカを持った巨大な女性像「イサバのカッチャ」が出迎えてくれます。地元の言葉で「イサバ」は「市場」、「カッチャ」は「母ちゃん」のことで、働き者で、明るく元気な、市場のおばちゃんたちを、親しみをこめてそう呼ぶそうです。
市営魚菜市場では、鮮魚のほか、スジコやタラコ、各種加工品、乾物、総菜など、それぞれ専門に扱う店が並んでいます。我々が目指した朝食は、ここで調達します。
システムとしては、お店で自分が食べたいものを買うわけですが、この時、一つの店に限らず、刺身はここ、焼き魚はあそこなど、別々に買っても全然OKです。で、それぞれの店でおかずを買ったら、奥の食事コーナーに行って、ご飯や汁物を頼みます。これで、自分だけのオリジナル朝食の出来上がりです。ちなみに、朝5時頃からご飯が炊きあがっており、10時頃まで、この中で朝食を取ることが出来ます。
陸奥湊駅前通りには魚菜市場の他にも、海鮮丼などで人気のみなと食堂や、鶏肉専門の大安食堂などがあり、朝から行列が出来ています。それぞれ、好みに合った店を選ぶといいかと思います。
ホヤの前で明るく笑っているおばちゃん いい味醸していますね。
返信削除何年前でしたかね、某団体の調整会議という名の下で青森に行ったのは。あの時食べさせていただいたウニとアワビが入ったいちご煮は衝撃でした。
この時、K嬢が一緒だったので、イサバのカッチャの皆さんは、とてもフレンドリーでした。撮影の後には、K嬢の実家で朝食を頂きましたが、朝から新鮮な海の幸が盛りだくさんでした。私が来たからではなく、いつもの朝食だったらしく、全くもってうらやましい限りでした。新コロが収まったら、K嬢実家の突撃訪問も計画しましょうか(笑。。。
削除突撃 K嬢の実家の朝ごはん!ですね。やりましょう。
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