浅間山北麓、嬬恋高原キャベツ村物語 - 冬編
昨日のブログで、嬬恋村のアイススケートについて書きましたが、嬬恋村の冬はかなり寒いのです。1、2月の最低気温の平均は氷点下9度。最高気温でも0度前後で、日中の平均は氷点下5度近くになります。ちなみに、同じ時期の札幌の平均気温は氷点下3度、最低氷点下7度、最高0度なので、嬬恋の方が寒さが厳しいことになります。
雪山の歌というと、ダークダックスが歌う「雪山讃歌」が有名です(古いけど・・・)が、その歌詞が生まれたのは、冬の嬬恋村鹿沢温泉でのことでした。その歴史を振り返ってみましょう。
「雪山讃歌」はダークダックスのメンバーが、まだ慶應大学の学生だった1950年、長野県の志賀高原を訪れた時にこの歌と出会い、後にレコード化したものだそうです。レコードの発売は1958年、今年から年金をもらえるようになった私が、二人の孫(ほのちゃん、めいちゃん)と同じ3歳だった年のことです(笑。。。
彼らが志賀高原を訪れたのはスキーのためで、終点に到着した時、バスの車掌さんが切符を回収しながら口ずさんでいたのが、この曲だったそうです。ダークダックスのバリトン・ゲタさんこと喜早哲さんが、『日本の美しい歌』(新潮社刊)という著書の中でそう紹介しています。
この曲は、アメリカ民謡「いとしのクレメンタイン」(原題:Oh My Darling Clementine)に日本語の歌詞を当てたものでした。「いとしのクレメンタイン」は、1946年公開のアメリカ映画「荒野の決闘」(日本公開は1947年)の主題歌となったことで日本でも広く知られるようになりましたが、実は日本語の歌詞は、それよりずっと前の1927年に出来たものだそうです。
で、その作詞者として日本音楽著作権協会に登録されているのは西堀栄三郎さんで、1960年、歌詞の著作権が登録された時に添付された確認書には、次のように書かれていました。
私は当時、京都帝国大学学生としてこの行に参加しておりましたが、昭和二年一月、吹雪にじこめられた鹿沢温泉の宿舎で西堀栄三郎氏が『雪山讃歌』を創作したことは上記酒戸氏の文章のとおりであり、爾後、旧三高山岳部部歌として歌われてきたものであることを確認いたします。
昭和三五年八月一七日
京都大学理学部教授
理学博士 四手井綱英」
確認書を書いた四手井さんは京大山岳部出身の森林生態学者。作詞者となった西堀さんも同じ京大山岳部出身で、第1次南極観測隊(1958年)の副隊長兼越冬隊長を務めた人です。西堀さんの著書『未知なる山・未知なる極地』(悠々社)の中に、まさにその時のことを書いたエッセーが収められており、そこには次のようなエピソードがつづられています。
鹿沢温泉での合宿を終えたものの、吹雪のため足止めをくらった京大山岳部の一行が、宿で時間を持て余す中、西堀さんが、退屈しのぎに山岳部の歌を作ることを提案。そしてその頃、ラッセルをやりながらよく歌った「いとしのクレメンタイン」の曲に合うよう、皆で歌詞を出し合い、それを四手井さんが書き留めていった、というのです。
いわば合作のためか、当初は作詞者不詳とされていましたが、後にフランス文学者の桑原武夫さんが、提案者の西堀さんと京都大学学士山岳会を作詞者として著作権登録を申請。それが認められると、ダークダックスのおかげもあり、京都大学山岳部の財政に著作権の印税がだいぶ貢献したようです。
こうした経緯もあり、鹿沢温泉には「雪山讃歌」の歌碑が建立され、嬬恋村では正午を告げる防災無線のチャイムに「雪山讃歌」のメロディが使用されています。
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さて、嬬恋を訪れるには、関東からだと、上信越自動車道・碓氷軽井沢ICから峰の茶屋を経由して入るルートと、関越自動車道・渋川伊香保ICから中之条を経由して国道145、144号を吾妻川に沿って走るコースがあります。軽井沢ルートが最短で、あまり信号もないので楽ですが、冬は峰の茶屋からほぼ雪道になるため少し時間がかかります。逆に渋川伊香保ルートは一番雪が少ないので安心ですが、インターを下りてからはずっと下道なので、こちらの方が若干時間がかかると思います。
ちなみに私は、最初に訪問した時が渋川伊香保ルート、次が軽井沢ルートでした。季節は、最初が夏、次が冬だったので、今思うと、季節でのルート選択を誤っていたかもしれません。そうは言っても、今回は冬編なので、自分が通った冬の軽井沢ルートのことを書きます。
碓氷軽井沢ICからは、県道43号で北陸新幹線の軽井沢駅を目指します。そして駅前のメーンストリートを北へ向かい、旧三笠ホテルの辺りで白糸ハイランドウェイに入ります。小瀬温泉を過ぎた頃から、道路の左手に湯川が見えてきます。ここから白糸の滝までは6kmほど。滝の入口には売店が1軒あり(ただし冬季休業です)、その左右に駐車スペースがあります。
白糸の滝 |
白糸の滝は軽井沢屈指の名勝なので、せっかくですから寄ってみてください。有史以来噴火を繰り返す、日本の代表的活火山の一つ浅間山の雪が伏流水となって湧き出るのが、白糸の滝です。高さは3mほどしかありませんが、細い筋になったいく条もの滝が70mにもわたって広がっています。よくよく見ると、こけむした岩肌から水が湧き出し、それが数千もの流れとなって、滝を形成していることが分かります。水温は1年中一定しており、冬でも凍ることはなく、鮮やかな緑のこけに覆われた岩肌を清洌な水が白い帯となって流れ落ちています。
ただし、駐車場から滝までは坂になっていて、冬場は雪や霜のため、日なたはぬかるみ、日陰は凍った状態になっています。すべって転ばないよう、歩行には十分注意した方がいいです。
白糸の滝から峰の茶屋を通って5kmほど走ると、左手に浅間山が大きく見えてきます。日中は青空に白い山がくっきりと浮かびます。浅間六里ケ原休憩所には広い駐車場があるので、ここで雄大な浅間山の姿を存分に楽しむことが出来ます。
鬼押出し |
その3km先には、黒い岩と白い雪のコントラストが美しい鬼押出しがあります。世界3大奇勝の一つに数えられる鬼押出しは、浅間山の溶岩流が北麓の広大な土地を埋め尽くし、凝結して出来た岩の海です。鬼押出し園は、この溶岩群に遊歩道を巡らせた公園で、冬季も営業しています。不気味に噴煙を上げる浅間山を背景に、間近に見る溶岩は迫力満点です。
嬬恋には、万座温泉、鹿沢温泉など4カ所のスキー場がある他、冬季には全面結氷する照月湖など、見どころ、遊びどころがたくさんあります。また北には草津温泉、南には軽井沢という観光地もあるので、いろいろな楽しみ方が出来ると思います。
地理感がないので群馬県のイメージは北関東で長野県とは距離があると思ってました。
返信削除鬼押出しや白糸の滝は行ったような気がします。
白糸の滝は静岡のそれと思い違いかもしれないけど😰
浅間山が浅問になってますよ。
嬬恋の隣にある長野原町には北軽井沢という地名がありますし、嬬恋でも北軽井沢や軽井沢という名を冠した別荘地やホテル、教会などがあり、浅間山の北麓は北軽井沢と考えていいと思います。
削除大宮から軽井沢まで新幹線で40分程度なので、家内や義姉などは新コロの前まで、気軽に軽井沢までに行っていました。
浅間、修正しておきました。ありがとうございます。
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返信削除いつもありがとうございます。私にとって群馬は四季を通して縁深い地です。
返信削除若い頃(長野道、上信越もない)、岐阜から中央道(岡谷)〜中略〜18号線を8時間かけて行ったものです。現在の住まいからは下道で調子が良いと3時間も掛からず入ることができ2カ月に一回は遊びに行きます。文中にもあるように、ファミリーや個人いろいろな楽しみ方ができますよね。
私ごとばかりでもう訳ありませんけど、群馬県は谷川岳もあったりして山岳界(70年代、80年代)ヒマラヤ鉄の時代をリードする精鋭たちを多く輩出しました。その中にあって「雪山讃歌」発祥の地であったことは歴史を感じさせますよね。
BeyondRiskさんも、雪山讃歌のように「街には 住めない」人種でしょうか? イメージ的には、次の記事に書いた川根本町の山下りなんざ、平気のへいさですかね。
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