北陸の銀閣寺とも称される松桜閣

松桜閣

黒部で「くろワン・プロジェクト」について話を伺った菅野寛二さんは、取材が終わった後、庭が黒部市指定名勝になっている「松桜閣」に案内してくれました。松桜閣は、富山地方鉄道の新黒部駅と舌山駅のほぼ中間にあり、北陸新幹線黒部宇奈月温泉駅からも歩いて5分ぐらいの所にあります。

松桜閣
もともとは、富山県の初代県令(県知事)国重正文の住居として、1883(明治16)年、富山市に建てられました。5年後、国重氏が内務省社寺局長として転任した後、空き家になっていたところを、1891年に黒部の豪農・西田豊二が買い取り、現在の場所に移築しました。

その後、永平寺64世貫首・森田悟由禅師(号・大休)に帰依し、得度した佐々木太七郎が、明治末に、西田家から屋敷ごと購入し、大休庵を結びました。そして、太七郎の子である尼僧・即妙師が、1931(昭和6)年に曹洞宗の寺院として開山。旧国重邸の隣に本堂を建立し、46(昭和21)年に寺号を大休山天真寺に改め、現在に至っています。

市の名勝に指定されている庭は、1898(明治31)年、豊二の弟・収三により、1530坪の回遊式大庭園として作庭されたものが、基礎になっています。それが、大休山開山の翌年、地元の庭師・城川久治が、近江八景を模して改修し、今の姿になったということです。


松桜閣庭園

しかし、近年は、旧国重邸の老朽化が進み、文化財的価値は失われつつあったようです。そんな状況を憂えた地元の方たちが、NPO法人「松桜閣保勝会」を作り、松桜閣の復活に立ち上がりました。そして、大工と庭師の育成を目的とする富山市の専門学校・職藝学院の上野幸夫教授に相談し、同学院の学生たちによって復元工事が行われました。

松桜閣

ちょうど、北陸新幹線開業の時期でもあったため、天真寺の了承も得て、黒部宇奈月温泉駅からも近い観光スポットとして、庭園と邸宅を開放。天真寺境内にありながら、松桜閣と庭の管理・運営は、松桜閣保勝会が担当しています。

松桜閣の数寄屋造りは全国的にも珍しい、建築学的に貴重なものだそうです。新幹線駅からも歩けますし、その後、舌山駅から地鉄に乗れば、宇奈月温泉までは24分。温泉前に、立ち寄ってみてはいかがでしょう。

コメント

このブログの人気の投稿

悲しい歴史を秘めた南の島の麻織物 - 宮古上布

愛媛県南部の初盆行事 - 卯之町で出会った盆提灯

銘菓郷愁 - 米どころ偲ばせて「養生糖」 新潟県新発田

『旅先案内』都道府県別記事一覧

岩手の辺地校を舞台にした「すずらん給食」物語

上州名物空っ風と冬の風物詩・干し大根 - 笠懸町

越後に伝わるだるまの原型「三角だるま」

地域の復興に尽くすボランティアの母 - 八幡幸子さんの話

飛騨高山で味わう絶品B級グルメとスーパージビエ

日本最北端・風の街 - 稚内