「火の国」熊本のシンボル・阿蘇山

噴煙を上げる阿蘇中岳

熊本 - 小国 - 阿蘇 - 高千穂 - 日之影の取材行3回目です。小国町の鍋ケ滝の撮影を終えた後、次なる目的地・高千穂までは、大観峰からミルクロードで、阿蘇の外側を通るルートが最短ですが、せっかくなので、阿蘇山に寄って行くことにしました。2013年当時は、阿蘇山ロープウェーが運行しており、まずはそこを目指しました。

阿蘇山は「火の国」熊本のシンボル的存在で、世界有数の大型カルデラと雄大な外輪山を持っています。今も盛んに噴煙をあげる中岳、1592mと阿蘇最高峰の高岳、鋸歯のような山容が特徴の根子岳に、杵島岳、烏帽子岳の阿蘇五岳が東西に連なります。その周りを、高さ700〜800mの外輪山が南北約24km、東西約18kmにわたって囲んでカルデラを形成しています。

阿蘇外輪山

そんな壮大なスケールを実感するためには、外輪山からの展望がお勧めです。鍋ケ滝から大観峰までは約20km、30分弱で着きます。大観峰展望台に立つと、眼下の谷に水田や町が広がり、その向こうに阿蘇五岳がどっしりと横たわります。その迫力ある景観には、圧倒されるばかりです。

特に見どころが集中しているのは、阿蘇山の西側です。大観峰から阿蘇山ロープウェーを目指すと、ちょうどそれらの絶景ポイントを通ります。すり鉢を逆さにしたような米塚は、緑の山肌が美しい寄生火山です。烏帽子岳の北側には、火口跡が大草原となった草千里ケ浜が広がります。夏には放牧された牛馬が草を食む、のどかな高原の趣となります。

外輪山やカルデラ内部にある中央火口丘の広大な草原は、ほとんどがススキとネザサの群落です。私が行った晩秋は、特にススキの穂が光に映え、非常に美しい景観を見せてくれました。

この風景は、阿蘇山の度重なる噴火やそれに伴う降灰によって生み出され、更に放牧や野焼きなど、人の手が加わって作り出されました。いわば自然と人間の共生によって維持されてきた草原で、歴史的産物と言っても過言ではありません。

阿蘇では毎年3月中旬に野焼きが行われます。前の年の枯れ草を焼却し、森林化の最初の段階である低木の生長を抑え、また地下茎が発達して火に強いイネ科の植物の比率を高めることなどを目的としています。野焼き直後の草原は一面真っ黒ですが、しばらくすると緑の草原に変わります。その頃にはあちこちに牛が放牧されます。また夏には、冬の牛馬の餌として背の高い草が刈り取られます。こうして阿蘇では年間を通してさまざまな営みがなされ、それが草原の維持につながっています。

阿蘇 ススキ群落

大観峰から阿蘇山ロープウェーまでは約30kmです。ロープウェーは、中岳火口西駅との間を約4分で結んでいました。しかし、阿蘇山の火山活動の活発化で2014年8月から運休し、16年の熊本地震と阿蘇中岳噴火で大きな被害を受けました。

その後、18年から解体工事を進めていましたが、阿蘇中岳火口見学は九州観光の目玉であり観光復興のためにも必要として、2020年度の竣工を目指し19年5月から架け替え工事を始めました。が、活発な火山活動の長期化で、安全な運営の確保が困難になり再建を断念。現在は、バス輸送に切り替え、阿蘇山ロープウェー乗り場は、阿蘇山ループシャトル・ターミナルとなっています。

阿蘇中岳

ループシャトルは、ターミナルと火口を結び、1日5往復運行しています。中岳火口展望所は、噴煙をあげる火口に迫ることが出来るスポットで、緊急避難用のシェルターがいくつも点在しています。もちろん火山活動時は立入禁止になります。

ちなみに、火口西駅を結んでいた阿蘇山ロープウェーの反対側には、火口東駅を結ぶ仙酔峡ロープウェーがありましたが、こちらは2011年から運行を停止しており、既に10年も経っているので、事実上廃止なのでしょう。仙酔峡は、中岳、高岳の北麓にあり、ミヤマキリシマの大群落が見られることで有名です。例年5月には、溶岩流の黒い岩肌が露出する荒涼とした谷が、ミヤマキリシマの濃く鮮やかなピンクの花で埋め尽くされます。


関連記事→先人たちから受け継がれてきた、大いなる遺産「千年の草原」 - 阿蘇

コメント

このブログの人気の投稿

悲しい歴史を秘めた南の島の麻織物 - 宮古上布

愛媛県南部の初盆行事 - 卯之町で出会った盆提灯

銘菓郷愁 - 米どころ偲ばせて「養生糖」 新潟県新発田

『旅先案内』都道府県別記事一覧

岩手の辺地校を舞台にした「すずらん給食」物語

上州名物空っ風と冬の風物詩・干し大根 - 笠懸町

越後に伝わるだるまの原型「三角だるま」

地域の復興に尽くすボランティアの母 - 八幡幸子さんの話

飛騨高山で味わう絶品B級グルメとスーパージビエ

日本最北端・風の街 - 稚内