魚沼産コシヒカリを使った「しんこ餅」 新潟県南魚沼
「しんこ餅」というと、奈良や京都の「しんこ」、関東の「すあま」など、上新粉で作った菓子の総称になります。上新粉は、うるち米を精白・水洗いし、乾燥させてから粉にしたもので、「しんこ餅」は、もち米で作られる普通の「餅」に比べ、粘りが少なくて歯切れがよく、コシと歯ごたえがあるのが特徴です。
新潟県では、郷土菓子として人気があり、特に日本屈指の米どころ中越地方では、名物となっています。中越の南部、魚沼地方と呼ばれる十日町市や魚沼市、南魚沼市などの「しんこ餅」は、白くて中に餡が入っているのが一般的です。このうち南魚沼市の浦佐には、その名もずばり「しんこ餅」という地方銘菓があります。
浦佐の「しんこ餅」は、もともと、国指定無形民俗文化財である浦佐毘沙門堂「裸押合大祭」が行われる日にだけ作られていました。裸押合大祭は、毎年3月に行われる日本三大奇祭の一つで、約1200年の歴史を持ちます。
807(大同2)年、坂上田村麻呂が、東国平定の際に自身の守り本尊「毘沙門天」を祭った御堂を建立。「国家安穏」「五穀豊穣」「家内安全」を村人と共に祈り、祝宴の中で歌い踊って士気を鼓舞したことが、祭の始まりと言われます。
この祭り、かつては新年の3日に行われていました。しかし、我先に参拝しようと多くの信者が押し合いへし合いし、更に除災招福を願って水行をしてお詣りする人も出て、次第に裸になる者が多くなり、ついには全員裸で御本尊に額づくといった案配で、1月から3月に日程を変え、今の裸押合大祭の形になったということです。
その浦佐にある東家製菓舗は、「しんこ餅」一本勝負の店。上新粉で作る「しんこ餅」は、すぐに固くなりがちですが、粉の配合を変えるなど試行錯誤を繰り返し、ようやく昔ながらの製法をベースにしながら、風味を損なうことなく柔らかさを保つことが出来るようになったといいます。そうして出来た「しんこ餅」は、さらっとした食感で甘さ控えめのこし餡を、ブランド米の魚沼産コシヒカリを使って包み込んでおり、浦佐名物の土産として、大人気となっています。
取材で浦佐に行った際、製造元を訪ねてみましたが、その日は早くに売り切れたらしく、営業時間内だというのに、既に店は閉まっていました。上越新幹線浦佐駅の売店にも置いてありますが、こちらも早めに行かないと売り切れ必至です。私は、たまたま駅前のホテルに泊まったので、あくる日、朝駆けで購入出来ました。
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