天神様の使い「鷽(ウソ)」は幸福を呼ぶ青い鳥

「天神様の使い」といえばウシが有名ですが、ウソもまた、同じ呼称が与えられています。

ウソという鳥は、日本では北海道や本州の亜高山帯にある針葉樹林に棲み、秋から冬にかけ、四国や九州などに渡る漂鳥ーいわば国内版渡り鳥です。体長は11〜12cm。頭部は黒く、背は青灰色、くちばしは太く黒い。オスは顔がバラ色をしており、なかなか美しい鳥です。

ウソが「天神様の使い」と言われるようになったのは、太宰府天満宮に平安時代から伝わる「神幸式」と関係があります。菅原道真の霊を慰めようと、道真の誕生日9月25日に行われているものですが、ある年、この神幸式の列にクマンバチが襲いかかり、行列が進まなくなりました。まさにその時、ウソが北から渡ってきて、クマンバチを食べてくれ、神幸式を滞りなく行うことが出来た、と伝えられます。

やがて1年中の嘘を、神前で誠に替えてもらおうと、人々が木彫りのうそを天満宮に持ち寄るようになりました。それがいつ頃から始まったのかは、正確には分かりません。が、江戸時代に、盛んに行われていたことは、記録により明らかになっています。

これが、現在も1月7日の夜、天満宮の境内で行われる「うそ替え神事」です。「うそ替えしましょう」と呼び合いながら、暗闇の中でうそを交換し合います。自分のうそより立派なものと替わると吉とされます。

明治時代になると、天満宮では指の先ほどの純金のうそを作り、神官が人々の中を回るようになりました。最初は3個でしたが、その後6個に、更に12個まで数も増えました。が、今は木うそに番号が入っており、神職が発表した番号のうそを持っている人に、純金製のうそが授与される形になっています。

うそ替えに使われる木うそは、もともとは自分たちで作ったものでした。野良仕事などで使う鎌で木を削ったもので、それぞれ形も異なっていました。その後、専門の作り手が登場、それらの人々により形も徐々に整えられてきました。しかし、一時は天満宮の禰宜を務めていた故・木村當馬さんだけになってしまい、天満宮を始め商工会議所などの呼びかけで太宰府木うそ保存会が発足。木村さんを講師に、後継者を育成してきました。

うそには朴(ホウ)の木を使います。原木の太さをそのままに、うそを削っていくため、大きさや太さは一本一本違っています。それがまた人気を呼ぴ、民芸品として木うそを求める人も多いようです。ちなみに、「うそ替え神事」は各地でも広く行われており、東京・亀戸天神や名古屋の七尾天神など、それぞれ独特の味を持っています。

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