伝統を醸す讃岐の「どぶろく祭り」
もちろん、ちゃんと財務省の許可を得てのもの。1898(明治31)年、酒税法の改正によリ、自家用の酒の醸造は禁止となりました。これに伴い、宇賀神社のどぶろく祭りも、一時中断の憂き目にあっています。しかし、氏子たちが協議のうえ陳情、1900年、年間1石(180リットル)以内との特許を得て復活しました。春は3月春分の日、秋は10月の例祭が、どぶろく解禁の日となります。
どぶろく祭りの由来は、実は明らかではありません。が、かなり古くからのものらしく、古老の話では、300年ぐらい前から続いているといいます。醸造も古式床しい製法で行われます。氏子の中の代々世襲されてきた杜氏によリ、昔ながらの醸造道具(県指定民俗資料)を使って造られます。ただ、昔は各部落の当屋の家で行われていましたが、現在は税法上、神社の境内で行われ、厳重な制度によって出来上がっています。
どぶろくは、祭リの前日にまず「口開け」の式を行います。次いで、祭リの当日、御神酒として神前に奉納し、神事が終わった後、氏子一同や一般の参拝者に頂かせるのが、習わしとなっています。また、祭リの日には、氏子たちが「エビ汁」をこしらえます。エビの頭を取リ、砕いてすりつぶしたものを、みそと一緒に煮ます。水は、米のとぎ汁を使うため、とろりとコクが出て、非常にいい味に仕上がります。このエビ汁と交互に飲めば、いくらでもどぶろくが腹に納まる、と氏子の人たちは言います。もっとも、度を越すと、救急車のお世話になることになるとか。取材当時は、県内の人にも、ほとんど知られていない祭リで、それだけに郷土色豊かで、素朴な味わいがありました。
現在は、2002年に創設された構造改革特区制度により「どぶろく特区」が認定され、全国で129の特区が、どぶろくをつくっています。しかし、宇賀神社のどぶろく祭りを取材した頃は、どぶろくの醸造は神事用として1石以内に限リ、奈良の春日大社、大分県大田村の白髭田原神社などに認められているだけでした。
ちなみに、春祭リは氏子だけですが、秋の例祭では、一般の参拝者にもどぶろくが振る舞われます。讃岐観光の折は、話の種に訪ねてみてはいかかでしょう。
※2枚目写真:どぶろくは祭リの後、氏子代表によって伊勢神宮に奉献されます。
←春のどぶろく祭では、百手神事が行われます。これは正月や春祭リなどに行われる的射の行事で、四国、特に香川県、愛媛県などで盛んです。矢2本を一手とし、200本の矢を100回に分けて射ることからそう呼ばれます。普通は成人の男子が弓を引きますが、豊中町の百手は、男の子が射るのが特徴になっています。そのため、この辺りでは男児が生まれたら、弓矢を贈るのが習わしになっているといいます。←どぶろくに合うのは、やはリ昔ながらの鉄瓶と茶碗。
コメント
コメントを投稿