甲府盆地をピンクに染める「桃源郷」の春

甲府盆地の東端、御坂山地の扇状台地に広がる笛吹市の一宮町と御坂町。春4月、この扇状台地が一面ピンクに染まります。50万本もの桃の木が彩る花模様は、まさに桃源郷の名にふさわしい風景です。

甲府盆地は果樹栽培が盛んです。中でも桃は日本一を誇ります。一宮、御坂などの峡東地方がその中心です。桃の栽培が始まったのは明治中期ですが、戦後、これが急速に伸び、日本一の桃の里と言われるまでになりました。

現在、桃の生産は山梨、福島両県で全国の5割を超えます。どちらも、周囲を高い山に囲まれた盆地の中に桃畑が広がっています。

盆地の冬は寒さが厳しく、逆に夏はひどく暑くなります。冬が寒いと害虫の被害が少なく、夏が暑いと果実が大きく育ち、甘みを増していきます。甲府盆地、福島盆地とも、桃に限らずブドウ、ナシなどの果樹栽培も盛んです。人間には堪える盆地の気候が、果樹栽培には適しているためです。

桃の花は例年、4月中旬が最盛期となります。しかし、一宮や御坂の桃畑は、盆地の底から標高700mの高台まで広がっています。それが平地から山地に向かって順に咲いていくので、花期は約1カ月と、とても長くなっています。


この間、菜の花の黄色やスモモの白い花が彩りを添え、桜が競うように花開きます。背景には残雪をいただいた南アルプスがそびえ、花景色を一層ひきたてます。

日本一桃源郷
また、桃の花は日がたつにつれ色が濃くなっていきます。そのため、緩やかな扇状台地一帯が、ピンクのグラデーションとなります。この風景を楽しむには、俯瞰できる場所がベスト。

一宮町なら狐新居の高台、御坂なら町の南にある花鳥山がお勧めです。また、中央自動車道の釈迦堂パーキングエリア(PA)もいい感じです。下りのPAから釈迦堂遺跡博物館への専用道路があり、これを上って行くと、ピンクの花の海の向こうに、青い南アルプスが望めます。

甲府盆地では、これからが桃の収穫の最盛期。春に人々の目を堪能させてくれた桃が、どんな味で我々の前に現れるか楽しみです。

ちなみに、笛吹市は2004年、石和町、御坂町、一宮町、八代町、春日居町、境川村が合併して誕生(その後06年に芦川村を編入)。翌05年には「桃・ぶどう日本一の郷」を、更に13年には「日本一桃源郷」を宣言しています。

桃は、市内各地で生産されていますが、やはり一宮と御坂が盛んで、フルーツ狩りが出来る観光農園もたくさんあります。詳しくは、一宮町観光協会と、御坂町観光協会のサイトをご覧ください。いずれもマップ付きの農園一覧が掲載されています。

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