水戸黄門こと徳川光圀ゆかりの桜と湧水群
複数の県をまたぐ県道は、その道路に関係する県同士で、同じ番号になるよう調整するようです。私が時々走る「栃木県道・群馬県道・埼玉県道・茨城県道9号佐野古河線」なんぞは、その最たるものでしょう。
で、今回の目的地、茨城県大子町を通る「福島県道・茨城県道195号下関河内小生瀬線」も、そんな県道の一つです。福島県矢祭町と大子町を結ぶ県道で、福島県から茨城県側に入った所は、大子町の外大野という場所になります。
この外大野に、水戸黄門こと徳川光圀お手植えの桜と言われる「外大野のシダレザクラ」があります。推定樹齢は約300年なので、光圀(1628〜1701年)が植えたという話も、一応成り立つことになります。
大子町観光協会によると「開花時期は例年4月上旬頃で、古くから地元の人々は、その蕾の膨らみや花の咲き具合を見て苗代つくりや田植えの準備を始めてきました。現在でも、農業暦に深い関わりを持つものとして地域に広く親しまれています。
樹は斜面中腹に生育しているため、生育地を囲むように設けられた歩道から見上げて又は見下ろして樹冠全景を観賞することができ、開花期間中には大勢の花見客が訪れるほか、ライトアップや桜祭りなども実施されます。」とのこと。
ちなみに地元では、大子町外大野字下大倉にあることから、単に「下大倉の桜」と呼ばれているそうです。
矢祭町と大子町の間には、あと2本、国道118号と県道196号が通ります。このうち国道118号は、一級河川久慈川に沿うように走り、茨城県水戸市と福島県郡山市を結ぶJR水郡線も、ほぼ並行して走っています。
久慈川は、福島県と茨城県の県境にある八溝山の北側斜面(福島県側)に源を発し、いったん北流した後、棚倉町でUターンして南流、矢祭町〜大子町を流れ、最後は太平洋へと注ぎます。日本有数のアユの釣場として有名で、釣り師たちが選んだ「天然アユがのぼる100名川」にも選定されています。
源流となる八溝山は、福島県と茨城県、更には栃木県にもまたがっており、山頂付近からは、阿武隈山脈から日光、那須連山、太平洋、関東平野まで望むことが出来ます。茨城県の山と言えば、筑波山が有名ですが、日本百名山の中で最も低い山として知られるように、茨城県には高い山がありません。で、実は標高1022mの八溝山が最高峰になります。
遊歩道のミズナラ(左)と金性水(右) |
その八溝山は、北方系と南方系の植物が分布している学術上貴重な森林としても知られます。山頂付近に広がるブナ、ミズナラ、シデ類、カエデ類の天然林は、八溝冷温帯性植物群落保護林に指定されています。植物の種類も非常に多く、約900種類と言われます。茨城県では珍しいダケカンバやオレカンバ、オヒョウなども見られます。特にダケカンバは、ふつう標高1500m以上の亜高山帯にあるものですが、八溝山では標高900m辺りから自生しており、大変珍しい植生を見せています。
八溝山は、山頂まで車道が通じているため、ほとんどの人が車を利用しています。私もそうでしたが、それではあんまりなので、せめて山頂付近にある遊歩道ぐらいは歩きたいものです。
県またぎの県道のうち、今度は栃木と茨城を結ぶ茨城県道・栃木県道28号大子那須線を走っていると、大子町側から向かって右側に大きな鳥居があります。ここが八溝山の登山口です。ただ、立派な舗装道路があるので、とりあえずは車を利用するのが便利。標高800m近くまで登るど、「日輪寺入口」の看板があります。少し先に駐車場があるので、車はここに停めましょう。前方に少し歩くと「旧参道」の看板が立っています。往きはここから入り、山頂で折り返してから左の道を進むと、日輪寺コースに出ます。全コース歩いても2時間程度なので、さほど苦にはならないと思います。八溝山は山頂付近の至る所から清水が湧き出ており、名水百選に指定されています。中でも、水戸光囲が命名したといわれる金性水、銀性水、白毛水、龍毛水、鉄水は八溝五水と呼ばれています。この湧水巡りも八溝山の魅力の一つ。遊歩道は湧水群を回れるように出来ているので、清らかな水を味わいながら歩くといいと思います。
歩道沿いにはブナ、ミズナラの巨木が点在し、カエデ類の潅木が多く見られます。山頂に近づくと、ダケカンバも見られるようになります。途中には八丁坂と命名された登りがありますが、その名ほどきつい坂ではありません。たいした苦労もなく登れるので、途中で諦めず山頂までがんばりましょう。
山頂にある八溝嶺神社は、日本武尊が東征の折に創建したと伝られ、坂上田村麿呂が宝剣を納め戦勝を祈願したと言われます。また大子町側の山麓にある日輪寺は、弘法大師が十一面観音を彫り本尊として安置したのが始まりとされ、坂東三十三観音第二十一番札所として参詣者が全国から訪れています。八溝山の帰り道には、ぜひ袋田の滝に寄ってください。袋田の滝は高さ120m、幅73mの大きさを誇り、日本三名瀑にも数えられる雄大な滝。4段に分かれて落ちていくところから、別名「四度の滝」とも呼ばれています。滝の近くには名物のアユの塩焼きなど、奥久慈の特産品をそろえたみやげもの屋が並んでいますよ。
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