太古からの森に抱かれた「妖精と出会えるまち」
大学時代の友人が、一時、札幌に単身赴任していたことがあります。東京生まれ東京育ちの彼にとって、冬の北海道はさぞ辛かろうと思いましたが、そんな心配はどこ吹く風。こちらが拍子抜けするくらい、札幌ライフを楽しんでいました。
ある時、その友人が、札幌の冬を表現して、「しんしんと雪が降るんだぞ」と言ったことがありました。実感のない私が、ふんふんと聞いていると、それを察した彼は、「本当に、しんしんと降るんだぞ、分からないだろうなあ」と、哀れむような目で私を見ました。そんな夜、彼は一人、部屋で本を読みながら過ごすのだ、とも話していました。
その頃にはだんだんイメージがふくらみ、何か彼だけ、人生が豊かになっているような嫉妬心を覚えたものです。
上の写真は、そんな冬の北海道の典型的な風景を切り取ったものです。撮影地の北広島は、友人が住んでいた札幌と隣り合わせ。札幌までは快速電車で16分、新千歳空港までは20分という場所にあります。
その北広島を、地元の方に案内して頂いたことがあります。札幌に近い場所は、住宅展示場と見紛うようなしゃれた家並が続いていました。当時は、札幌のベッドタウンとして宅地化が進み、人口が増加している頃でした。
また、札幌という大消費地を控え、農業も野菜などの近郊農業が中心でした。第一印象は、「何だか北海道らしくない街」でした。この辺を歩いている限り、とてもこれぞ北海道的な写真が撮れるとは思えませんでした。
ところがどっこい、北広島には、特別天然記念物・野幌原始林の一部を含む広大な森が、市の中心部にあります。東京なら、車で2時間は走らないとお目にかかれないような豊かな自然が、駅から歩いてすぐの場所にあるのです。
更に、郊外に出れば広々とした牧草地や耕作地もあり、まさに北海道らしい風景が広がっています。そこに「しんしん」と雪が降れば、北海道らしくないものまで隠してくれ、道外の人間がイメージする「完璧な」北海道が出現します。
北広島は「妖精と出会えるまち」をキャッチにしています。市内にはエルフィン・ロードというサイクリングロードも整備されています。ゆっくり自転車で回ってみたい土地です。
※北海道の開拓時代を物語る「旧島松駅逓所(国指定史跡)」は、クラーク博士が帰国の際、見送りに来た生徒たちに「Boys be ambitious」の名言を残した地でもあり、また寒地稲作発祥の地でもあります。北広島市内には、全日空オープンが開催される輪厚を始め、8カ所のゴルフ場があり、道内外のゴルファーを引きつけています。
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