火山と森と湖。手つかずの大自然が残る阿寒国立公園

阿寒湖の夕景

阿寒国立公園は「火山と森と湖」の公園と呼ばれます。公園内には、2006年の春分の日に噴火した雌阿寒岳(1499m)や、雄阿寒岳(1371m)、阿寒富士(1476m)と三つの活火山があります。周囲にはマリモで有名な阿寒湖や、ペンケトーとパンケトー、それに神秘の湖と呼ばれるオンネトーなど、これらの火山による堰止め湖が点在し、それらを包むように深い原生林が広がります。こうした阿寒の森は、アカエゾマツ、トドマツなどの常緑針葉樹と、ミズナラ、カツラなど落葉広葉樹とからなる針広混交の森となっています。

また、阿寒湖温泉と野中温泉(雌阿寒温泉)という、二つの温泉地を持っています。阿寒湖温泉の方は完全に観光地化していますが、雌阿寒温泉は原生林に囲まれた静かな雰囲気を残しています。

阿寒の森 アカエゾマツ

この阿寒国立公園の中は、いくつかの拠点を結ぶ車道が整備されています。それを周回するのが一般的ですが、一つひとつゆっくり親しむと、また違ったものも見えてきます。今回は、阿寒湖と雄阿寒岳、雌阿寒岳を主体とした、公園の西側部分を紹介します。

まずは阿寒横断道路(国道241号)沿いにある双湖台に寄ってみましょう。摩周湖のある弟子屈町から来ると、阿寒湖畔温泉の少し手前にあります。ペンケ、パンケの両湖が望める展望台で、森全体が俯瞰出来ます。


阿寒の典型的な森林相を確認したら、次は雄阿寒岳登山口に向かいます。ここは阿寒湖の水が阿寒川となって流れ出る出水口です。水辺に沿って歩くと、林床には本州では高山帯に咲く花々が見られます。十分ほどで太郎湖に出ます。岩場からは清水が湧き出し、湖の縁には丸く大きな葉を持つラワンブキが密生しています。太郎湖の周辺はアカエゾマツ、トドマツなどが混生する美しい森になっています。この先は次郎湖を経由して、雄阿寒岳山頂まで約3時間半。しかし、結構傾斜が急なので、森を歩くことが目的なら、適当なところで引き返すほうが賢明でしょう。

雄阿寒岳の次は、雌阿寒岳山麓の森を探勝しましょう。阿寒湖畔から、足寄峠を越えてしばらく走るとオンネトーへ向かう道に出ます。この道は森の中に切り開かれているので、両側に美しい自然林を見ながら走ることが出来ます。

阿寒の森 アカエゾマツ

雌阿寒岳の登山口付近はアカエゾマツの美しい森が見られます。登山道はかなり急な登りがありますが、入り口から20分ぐらいの間は傾斜が緩く、また特に林相も美しいので、ぜひ散策したい場所です。それが終わったら、オンネトーへ向かいましょう。

オンネトーはコバルトブルーの水をたたえた神秘的な沼。オンネトー湖畔もやはりアカエゾマツの見事な森が形成されています。森の中は湿気をたっぷりと含み、林床を緑のコケが覆っています。風倒木もコケに覆われ、その上にアカエゾマツやトドマツの幼樹が育っています。


阿寒の森はいずれも、見事な倒木更新が観察出来、健康的な森の姿に接することが出来ます。

※阿寒湖までは、釧路空港から車で約1時間、JR釧路駅から約1時間半。阿寒湖畔にビジターセンターがあります。阿寒の自然や動物などを分かりやすく紹介しており、自然散策や登山の情報を聞くことが出来ます。また特別天然記念物のマリモ展示観察センターや、重要無形文化財のアイヌ古式舞踊を見ることが出来るアイヌコタンなどがあります。

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