超絶おいしいヨーグルトと煮込みジンギスカン
明日は然別湖の日の出を撮るつもりだと言うと、当時、然別湖コタンの村長を務めていた菅原末治さんは、そう言ってカラカラと笑いました。
真冬の北海道。27度と言っても、アタマにマイナスが付きます。冷凍庫の平均温度が氷点下18度です。う〜ん、冷凍庫の中より寒いじゃないの・・・と思わず嘆息した私。
然別湖は北海道の屋根と言われる大雪山麓の南端、標高は800m、道内で最も高所にある湖です。冬の凍結が道内最初なら、春の解氷も最も遅く、寒波がやってきた早朝には、最低気温がマイナス30度近くまで下がります。
雪と氷に閉ざされた氷点下30度の厳寒の地。普通なら、気温と同様マイナス・イメージがつきまといます。しかし、鹿追は違っていました。逆に、この寒さと氷をウリにしたイベントを開催し、多くの観光客を集めているのです。
それが、然別湖コタン(コタンはアイヌ語で村の意味)です。今年で40年目を迎え、氷上露天風呂やアイスバーなどが、冬の間の60日間、期間限定で建設されます。これらの設営には、湖上建設隊というボランティアが、全国から駆けつけます。ピーク時には60人もの人が湖上で作業をしているというのですから、コタンづくりそのものが、既に立派なイベントとなっているようです。
さて日の出ですが、折悪しく山の頂から出てきてしまったため、氷点下20度の中で2時間も待つはめになりました。その間、観光客が数人、露天風呂に入りに来ましたが、それを横目に寒さに耐え忍ぶ私でありました。
然別湖のある鹿追町は、十勝平野の北西端。農業王国と言われる十勝平野の中でも、大規模経営の農業が営まれていることで知られています。それもあって、農業経営者1戸当たりの農業粗生産額は、日本の農業の中ではトップクラスとなっています。
こうした大規模経営を支えるものに、JAによる作業受委託(コントラ)事業と、酪農ヘルパーの存在があります。これにより、人材確保や機材の調達等、非常に効率よく経営が行われ、酪農王国と称される地位を築いたのです。
そんな中、鹿追では「田園ライフ」というキーワードで、地域づくり、農と食などを考えるツーリズムという動きが起こりました。鹿追町では以前、欧米の農業や農場視察のため、町の農業家を海外へ派遣していた時期がありました。その一人、中野一成さんは、カナダから帰国後、自力でログハウスを建て、牧場レストランを始めました。更に宿泊用のコテージも建設、ファームインに乗り出したのです。
ファームインとは都市と農村の結び付きを深めるため、農家や酪農家が始めたもので、欧米では、都会から離れてゆったり休暇を過ごす場所として、生活の中に根付いていました。そして、中野さんの動きは周囲にも刺激を与え、仲間の輪が広がって、1989年には鹿追町ファームイン研究会が発足。やがて研究会の活動は地域づくりへとつながり、2001年には若い農業者の育成を目的に北海道ツーリズム大学が設立されました。
更に、然別湖でネイチャーガイドをしながら自然監視をしているネイチャーセンターや、乗馬を楽しむことの出来るライディングパークなどのグループとも連携。ネットワークがどんどん広がり、より一層、町の活性化につながっていきました。
この時、「大草原の小さな家」「カントリーパパ」「カントリーファーマーズ藤田牧場」などのファームインや、ヤマメやオショロコマ、しかりべつサーモンなどを刺身や塩焼で出す「鹿追やまべ園」、酪農専業農家の乳加工部門「カントリーホーム風景」などを取材させてもらいました。
このうち、「カントリーホーム風景」は、鹿追の農事組合法人第1号「東瓜幕協和生産組合」を立ち上げた清水據鄰さんの長男智久さんが、「自分たちがしぼった新鮮な牛乳で、子どもに食べさせても安心な加工品を作りたい」と、2000年に新設。その中で智久さんは、酸味を抑えたヨーグルトの開発に乗り出し、2年間の試行錯誤を経て、05年に商品化することに成功しました。
で、この時、食べさせてもらったヨーグルト「でーでーぽっぽ」が超絶おいしくて、その後も、ずっと頭から離れませんでした。それが先日、「でーでーぽっぽ」でネット検索をしてみたところ、鹿追町のふるさと納税返礼品に掲載されているのを発見。速攻、ぽちっと致しまして、本日めでたく冷蔵で到着した次第です。そのため急遽、鹿追の記事をアップすることにしました。
ただ、タイミング良く、今年に入ってから、士別、旭川、函館と、北海道の記事が続き、それもグルメ・ネタが中心になっていたので、ちょうどいい案配でした。そこで、最後にもう一つ、お勧めのジンギスカンを紹介しておきます。
「大阪屋」という店で出しているジンギスカンで、取材をした当時の吉田弘志町長直々のご推薦で、食べに行きました。ここは焼くのではなく、煮込みです。特製ダレに漬け込んだ肉を、野菜と一緒に煮込んだもので、ジンギスカン鍋というより、モツ鍋に近い感覚です。士別のジンギスカンを絶品と紹介しましたが、こちらもまた、非常においしいものでした。
トイレに立った時、ふと見ると、のれんが阪神タイガースのものでした。たぶん大阪生まれのおやじさんが、それこそ慣れ親しんだモツ鍋とジンギスカン鍋を合体させたのではないか、と推察しました。現在は代が替わっているようですが、今も先代が考案した煮込みジンギスカンを継承しているようです。
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