羊のまち士別で味わう絶品ジンギスカン - 花の友

士別神社

2021年最初のブログは、北海道士別市の記事です。写真は、道北随一と言われる壮麗な社殿を持つ士別神社です。

士別市は、道北の中心都市・旭川から北へ約50km、最北の稚内までは約190kmという位置にあります。

士別は、最後かつ最北の屯田兵入植地で、1899(明治32)年7月、屯田兵第三大隊第五中隊の100戸が入地したのが始まりです。この時、士別の南隣の剣淵にも、第三中隊(南剣淵兵村167戸)と第四中隊(北剣淵兵村167戸)が入植。

当時、鉄道が敷設されていたのは、剣淵から10kmほど南の和寒までで、和寒から先は徒歩で剣淵兵村へ入りました。そして、剣淵屯田兵らと共に第三大隊入隊式を終えた士別の屯田兵と家族は、更に道なき道を歩いて士別兵村に到着したそうです。

屯田兵は、明治時代に北海道の警備と開拓に当たった兵士で、原則として家族同伴による入植を義務付けられました。制度が設けられた1874(明治7)年には、服役年限に定めはありませんでしたが、1890(明治23)年の屯田兵条例改正で服役期間が20年になり、その後、1894年からは20年のうち8年を現役、残り12年を後備役と改められ、更に1901年からは現役5年、後備役15年と改正されました。そして、最後の入植者である第三大隊の第三〜第五中隊が後備役に入った1904(明治37)年をもって、屯田兵制度は廃止されました。

サフォークめん羊

士別に入植した屯田兵は、東北から九州まで28県の出身者からなり、最多は宮城県の18人、次いで福島県11人、山形県と和歌山県9人などとなっていました。この時、入植した100戸のうち、1戸が火災に遭ってしまい、残り99戸で士別の開拓が始まりました。

士別の屯田兵たちは、まず錬兵場の一角に開村記念標を建立し、天照皇大神を奉斎しました。この明治32年7月15日が、士別開基、士別神社の創祀となっています。

士別神社は、士別市のほぼ中央にある小高い丘「九十九山」に鎮座しています。この九十九山の名は、士別の開拓を始めた99戸に由来しており、毎年5月には約2000本のエゾヤマザクラやエゾカスミザクラ、チシマザクラが咲き誇ります。

その士別市では、観光やまちおこしのため、約1100頭のサフォーク種めん羊が飼われ、羊のまちとしても知られています。観光牧場の他に、羊毛を利用した製品の手作り体験が出来たり、羊肉を使った士別オリジナルの料理を楽しめたりします。

士別産サフォーク手紡ぎ毛糸

羊の種類は、用途によって毛用種と肉用種に大別されますが、サフォーク種はその両方に優れ、性格も穏やかで飼いやすく、顔と手足が黒く、毛が白いのが特徴です。士別では、このサフォーク種めん羊を1967年に導入しました。当初は、農業の複合経営と畜産振興を図るためでしたが、羊でまちおこしを図ろうと、82年に「サフォーク研究会」という市民組織が設立され、以来、さまざまな取り組みが行われるようになりました。

士別市の「ふるさと納税」返礼品を見ると、サフォークの手紡ぎ毛糸を使った帽子や手袋、マフラーなどのニット製品から、士別産サフォークラム肉を特製のタレに漬け込んだ味付きのジンギスカン、食肉加工後の羊の原皮を活用した「サフォークレザー」製品など、関連商品がたくさん用意されています。

花の友
中でも人気の士別産サフォークラム肉は、適度なサシが入り、羊独特の臭みもなく食べやすいのが特徴です。また、士別ではトウモロコシなどの穀物による飼育を行っており、穀物に含まれる良質のタンパク質などによって、柔らかく旨みの多い肉質になっています。

そんな士別市に、「日本一うまい」とも言われるジンギスカンの店「花の友」があります。ここは、士別取材の際、コーディネートをしてくださったAAさんを始め、地元の方たちが口をそろえて勧める店でした。

実は、この時の取材はライターの砂山さんとカメラマンの田中さんのもので、私は当事者ではありませんでした。その頃、レイアウトを担当していたベテラン・デザイナーUSさんの意見を尊重しすぎて、二人の構成にやや迷いが感じられたため、改めて方向性を定めようと、たまたま取材に立ち会ったのが、この時でした。

ただ、それが私にとってはラッキーだったわけで、取材後、AAさんたちが夕食に連れて行ってくれたのが、「花の友」でした。もともとは居酒屋として開店し、店名は当時、売られていた酒の銘柄からつけたものだそうです。

ジンギスカン「花の友」

で、この店でまず驚くのが、鍋の形です。鋳物で作られた、ずっしりとした質感を持つ鍋で、中央が少し窪んでいます。これまで知っていたジンギスカン鍋とは、かなり違います。 そして、この鍋の周りに肉を敷き、中央の窪んだ所に野菜をのせます。これを、生姜入りのタレで食べるのが、「花の友」流ジンギスカンです。

肉はオーストラリア産のマトンですが、時間と手間をかけ脂身を全て取り除いているため、マトン特有の臭みは全くありません。その上、スジも丁寧にトリミングしているので、びっくりするほど柔らかくなっています。その肉を、独特の鍋で焼き、山盛りに入れた生姜を崩しながら醤油ベースのタレで食べるのですが、マトンの旨みだけが残り、しかも脂がカットされているため、いくらでも食べられます。

ジンギスカン「花の友」

「花の友」は士別駅から徒歩7〜8分。旭川からは車でも列車(宗谷本線)でも約1時間。夜だけしかオープンしていませんが、道北を訪れた方は足を伸ばしてみることをお勧めします。


コメント

  1. メーメーと鳴く羊を見てからのジンギスカンは刺激的ですね。私は大昔、デンバー コロナドの山の中でオートメーションで屠殺する牛の姿と鳴き声、そしてちょっとグロですが床に流れる血の匂いをかがされた後、吉野家で牛丼を食べるという経験がありました。さすがに食べられませんでした。

    返信削除
    返信
    1. 私もデンバーで吉野家を探したんですが、その前の倒産時に、デンバー店も閉鎖していたみたいで、残念ながらアメリカ1号店でBeef Bowlを食べるというミーハー企画は実現しませんでした。

      削除
    2. そう言えば、タイのKHさんは、吉野家の牛丼好きでしたね。一度、浦和の吉野家から一人で出てくるKHさんを見掛けたこともあります。

      削除

コメントを投稿

このブログの人気の投稿

悲しい歴史を秘めた南の島の麻織物 - 宮古上布

愛媛県南部の初盆行事 - 卯之町で出会った盆提灯

銘菓郷愁 - 米どころ偲ばせて「養生糖」 新潟県新発田

『旅先案内』都道府県別記事一覧

岩手の辺地校を舞台にした「すずらん給食」物語

上州名物空っ風と冬の風物詩・干し大根 - 笠懸町

越後に伝わるだるまの原型「三角だるま」

地域の復興に尽くすボランティアの母 - 八幡幸子さんの話

飛騨高山で味わう絶品B級グルメとスーパージビエ

日本最北端・風の街 - 稚内