沖縄の定番グルメ「いなりチキン」と「沖縄おでん」

 

勝連城跡

沖縄県のうるま市は、具志川市、石川市、勝連町、与那城町の2市2町が合併して、2005年に誕生しました。市名は「サンゴの島」を意味する古い沖縄方言(ウル=サンゴ、マ=島)に由来しています。

うるま市には、金武湾と中城湾に面して八つの島があり、このうち平安座島(へんざじま)、浜比嘉島(はまひがしま)、宮城島(みやぎじま)、伊計島(いけいじま)は東洋一の長さを誇る海中道路で勝連半島と結ばれています。全長4.75kmの海中道路は、その名の通り、まるで海の中を走っているような錯覚を起こします。道路が低い上、道の両側に海が広がっているからです。

取材は、平安座島の越來(ごえく)造船と、浜比嘉島の高江洲製塩所、それに本島側の神村酒造、世界遺産の勝連城などが対象でした。

高江洲製塩所
高江洲製塩所の流下式塩田

越來造船は、沖縄で唯一、琉球王朝時代の「マーラン船」の造船技術を継承しています。マーラン船というのは木造帆船で、古くから琉球の島々を結ぶ交易船として使われてきました。しかし、戦後は、輸送方法が海上から陸上交通に転換、1959年を最後にマーラン船は姿を消し、実際に運航されている船はありません。そんな中、うるま市無形民俗文化財となっている越來造船3代目の越來治喜さんと4代目の勇喜さん親子が、琉球王朝時代からの造船技術を後世に伝えるべく活動しています。

また、高江洲製塩所は、昔ながらの流下式塩田で塩作りをしています。流下式塩田は、ゆるい傾斜をつけた流下盤の上に海水を流し、太陽光で水分を蒸発させ、更に竹の枝を組んだ枝条架の上から滴下させて風で水分を飛ばし塩分濃度を高めます。塩の専売制が廃止されて以降、味が良く、塩辛さの中にほのかな甘味や苦味を感じさせる、塩田による塩が再び脚光を浴びるようになり、高江洲製塩所の塩も、ミネラルバランスが整い、コクと旨みが詰まった粗塩として人気を博しています。

神村酒造暖流
神村酒造は、戦後の米軍統治下で、「官営泡盛製造廠」として復活した五つの酒造廠の一つで、バーボンウイスキーの貯蔵に使ったオーク樽を使って熟成させた泡盛「暖流」などで知られます。「暖流」は、オーク樽で3年以上熟成させた琥珀色の古酒と、タンク貯蔵の透明な泡盛を、神村酒造独自のレシピでブレンドし、甘いオーク樽の風味と古酒特有の豊かなコクを併せ持つ泡盛に仕上げています。

那覇到着後、空港でレンタカーを借り、まず高江洲製塩所へ向かいました。うるま市へ着いたのが、ちょうど昼時だったので、沖縄自動車道の沖縄北ICを下り、海中道路へ向かう途中にある「丸一食品」塩屋店へ立ち寄りました。丸一食品は、いなりとチキンの専門店です。

いなりは、沖縄では非常にポピュラーな食べ物で、これとチキンの組み合わせは、沖縄のソウルフードとも言われています。そして、その元祖と言えるのが、丸一食品で、駐車場に交通整理の警備員がいるなど、常に行列が出来る人気店です。

いなり2個とチキン1個で280円というセットが一番の売れ筋のようですが、我々が到着した時には既に売り切れ。まだ12時台だというのに・・・。そのため、いなりとチキンをそれぞれバラで購入し、駐車場で実食。


丸一食品いなりチキン
いなりは、一般的ないなりに比べると、甘味は弱めで、酸味が効いた、さっぱりとした味でした。一方のチキンは、香辛料が効いていて、パンチのある味わいとなっていました。

そんなわけで、のっけから沖縄の定番グルメを味わった我々は、高江洲製塩所、越來造船と取材させてもらい、夕方、勝連城跡のロケハンを済ませて、ホテルへ入りました。ホテルは、旧具志川市にあるホテルハーバーで、なぜここを選んだかと言うと、近くに「いこい」というおでん屋さんがあったからです。

知らない人は、「わざわざ沖縄でおでん?」と思うかもしれませんが、実は沖縄の人は、おでんが大好きらしいのです。私はこれまで、那覇市の有名店「悦ちゃん」と「東大」に行っていますが、どちらもとてもおいしかったので、カメラマンの田中さんにもぜひ沖縄おでんを味わってもらいたいと思ったのです。

沖縄おでんには、テビチ(豚足の煮込み)やウィンナー、夏ならウンチェー(空心菜)、冬なら小松菜、レタスなど季節ごとの青物が入ります。もちろん大根、玉子、昆布など、定番のおでんだねもありますが、やはり郷に入っては何とやら、いこいでは、迷わずテビチと野菜とソーセージを注文しました。

おでんいこい

継ぎ足しの秘伝だしで煮込まれた、いこいのおでんは、味がしっかり染みて、とても美味。これに安心して、ウンチェー豚肉炒め、ヘチマ炒めなどをオーダー。店に置いてあった、どなん60度と共に、どれもおいしく頂き、充実した1日を締めくくることが出来ました。

ところで、おでん屋さんのために選択したホテルハーバーですが、路地裏にあるため、最初は車で入る道が見つけられず、いったん通り過ぎてしまいました。建物はかなり古く、中には、古いというだけで敬遠する人もいると思いますが、部屋は昔のアメリカのホテルを思わせるようなたたずまいで、私は、こういうの嫌いじゃありません。それに、オーナーご夫婦がとてもいい方で、手作りの朝食もおいしく、アットホームな感じのホテルでした。

ホテルハーバー

取材記事→「沖縄の自然や文化に根差す『サンゴの島』の人々


コメント

  1. 昔、知り合いにウルマさんという方がいました。いまから思えばどんな漢字だったんだろうと思います。たぶん沖縄の出身だったと思うのですが、サンゴの島という意味だったんですね。

    沖縄の食文化ってすごく興味もあり、また好きです。一時期沖縄にはまっていたことがあり行くと必ずソーキそばは食べていました。ソバはダメな私ですが、これは堂々と食べられるソバでしたから。島とうがらしをちょっと多めに入れて、むせながら食べるのが面白かったものです。

    返信削除
  2. 築地にいた頃は、よく沖縄料理店にも行っていたんですが、自宅近くにはなく、リタイア後は自分でチャンプルーを作るか、おでんに野菜やウインナーを入れるぐらいしか、沖縄的な料理にありつけていません。わしたショップはあるので、食材は入手可能ではあるのですが・・・。ソーキそばは、今では冷凍食品で間に合わせてます。

    返信削除

コメントを投稿

このブログの人気の投稿

悲しい歴史を秘めた南の島の麻織物 - 宮古上布

愛媛県南部の初盆行事 - 卯之町で出会った盆提灯

銘菓郷愁 - 米どころ偲ばせて「養生糖」 新潟県新発田

『旅先案内』都道府県別記事一覧

岩手の辺地校を舞台にした「すずらん給食」物語

上州名物空っ風と冬の風物詩・干し大根 - 笠懸町

越後に伝わるだるまの原型「三角だるま」

地域の復興に尽くすボランティアの母 - 八幡幸子さんの話

飛騨高山で味わう絶品B級グルメとスーパージビエ

日本最北端・風の街 - 稚内