豪雪地帯・妙高の冬の風物詩「かんずりの雪さらし」を求めて
新潟県妙高市を取材で訪れたのは、2016年2月でした。この地方の冬の風物詩「かんずりの雪さらし」に合わせて、この時期を選びました。
かんずりは、新潟を代表する辛み調味料で、我が家の近くだと、カルディが取り扱っています。これは昔、妙高市新井地区の農家が、唐辛子をすりつぶし、それに塩を混ぜて鍋やうどんの薬味にしていたものです。新井の人たちは、農閑期の寒い時期に造ることから、「寒造里」と言っていたようです。
しかし戦後は、いろいろな調味料が手軽に入手出来るようになり、寒造里を造る家が少なくなりました。そんな風潮を憂い、伝統の味を残したいと、寒造里の商品化に取り組んだのが、㈲かんずりの初代社長でした。現在の社長は、父であるそんな初代社長の泣き落としにあい、かんずり一筋の人生を歩むことになったと述懐されていました。
かんずりには通常の3倍はある専用の大きな唐辛子を使います。これを夏から秋にかけ収穫し、良質なものだけを選別して天然の海水塩で塩漬けにします。年が明け1月の大寒の頃からは雪の上にまき、3日間ほど「雪さらし」をします。これにより雪が塩分を吸い取り、唐辛子のアクが抜けると共に、甘みを増しマイルドな味になるそうです。
雪から掘り起こされたかんずりは、細かく粉砕され、麹、柚子、天然塩と混ぜ合わせ、定期的に手返しをしながら3年間熟成させます。この間に唐辛子の辛味と麹のうま味、柚子の酸味と渋味、塩の風味が程良くブレンドされ、深い味が生み出されます。
妙高では、鮎正宗酒造も取材させてもらいました。鮎正宗酒造は明治8年創業で、かやぶき屋根の建物の下からは、酒の原料となる柔らかな水が、こんこんと湧き出ていました。この辺りは豪雪地帯・妙高の中でも特に雪が多く、それらが伏流水となって湧き上がっているのです。この湧き水を口に含むと、まろやかな甘さを感じます。典型的な軟水で、鮎正宗酒造はそれを仕込み水に、さらりとした甘口の日本酒を作っています。
また、鮎正宗酒造は、上越市と妙高市の若手の酒屋が合同で取り組むプロジェクト「酒らぼ」とのコラボで、杉樽で仕込んだ「シダーカスク」を発売。暑い夏も爽やかに日本酒を楽しめる、と人気の商品で、毎年、販売が待望されています。
この鮎正宗の取材後、妙高の市街地へ戻って、酒らぼの一員・やまぎし酒店を訪ね、撮影に協力してもらえそうな店を紹介してもらい、妙高らしい地酒と料理のアレンジをお願いしてみました。そうして紹介してくださったのが、「薬膳屋一」さんで、かんずりソースを合わせた牛肉のタタキと鮎正宗の純米生原酒を撮影させてもらいました。
実のところ、薬膳屋一では、調味料としては自己主張が強すぎるので、普段はあまり、かんずりは使わないそうですが、取材のために特別にアレンジしてくださったものでした。で、予約していたホテルのすぐ近くだったこともあり、撮影を終え、機材をしまうと、そのまま席に座って、おいしい料理と鮎正宗を堪能させてもらいました。
ところで、かんずりの里・新井には、この地域の名物となっているとん汁専門店「たちばな」さんがあります。具材は豚肉、タマネギ、豆腐と、いたってシンプルですが、濃厚でやさしい甘みのある汁が特徴となっています。
味の決め手はタマネギで、2kgの豚肉を炒めた後、大量(5kg)のタマネギを投入、更に400gの木綿豆腐7丁を加え、じっくり煮込みます。そして最後に前の残り汁をブレンドして完成。創業から44年間、変わらぬ味を守り続け、地元客から観光客まで連日大盛況。多い日には600杯も出る超人気とん汁なのです。
で、ここにもありました。かんずり・・・。連れて行ってくれた地元の方の話では、まず普通にとん汁を食べた後、かんずりをお好みで加えて食べるといいですよ、とのこと。確かに、タマネギが大量に入っているだけあって、甘みのあるとん汁に、かんずりを入れると、また違った味が楽しめました。
「たちばな」は、とん汁専門店ですが、客の要望が強かった「とん汁ラーメン」も、平成に入ってから誕生。今では、主力メニューの一つになっているそうです。更に、麺を食べ終わった後、スープにご飯を入れて食べる人もおり、中にはそこにかんずりを入れ、ぐちゃぐちゃにかき混ぜて食べる人もいるそうです。こうなると、とん汁というよりは、妙高版クッパという感じだろうか、などと想像をふくらませる私です。
取材記事→「地域のオンリーワンを守る雪国妙高の心意気 - 妙高」
連投おつかれさまです(笑)
返信削除そう言えば、この時初めてかんずりのことを知りました。そしていただきましたよね。その後見かけることがないのですが、カルディアにあるんですか?今日カルディアに行ってみようかな。
私は鍋物には、柚子胡椒派です。
先週、軽いぎっくり腰になってしまい、ブログ更新をサボっていました。で、がんばっての連投です。Wヘッダーもあったりして、ど根性時代のピッチャーみたいな感じです。。。
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