安全・安心な天神町商店街とシジミパワーの宍道湖 - 松江
宍道湖の夕日 |
ある企画で、島根県松江市と高知県大豊町を取材し、一本の記事にまとめることになりました。松江と高知と言えば、中国地方の日本海側と四国の太平洋側です。ちょっと無茶かなと思いながらも、一度に取材することにし、カメラマンの田中勝明さんに、撮影を打診してみました。
すると田中さんも異論はないということで、羽田~米子~松江~岡山~丸亀~大豊~高知~羽田と移動しながら、松江、丸亀、大豊の3カ所を2泊3日で取材する日程を組みました。
初日は4時半起きで羽田空港へ。が、京浜急行がストップし、振替輸送の案内。そこで新橋から浜松町へ出て、モノレールに乗り換え。何とか飛行機には間に合いましたが、初っぱなから前途多難を思わせる取材行となりました。
その予感は的中。米子空港に近付いた搭乗機は、徐々に高度を下げ、滑走路が見えてきました。が、無事着陸と思われた瞬間、飛行機はスピードを上げ再び上昇。
おいおい、いったい何事? すかさずスチュワーデスは、「当機は既に着陸態勢に入っていましたが、再び上昇しております」と、みんなが知ってる事実を伝えたものの、「状況が分かり次第、またお知らせします」でアナウンス終了。数分後に、機長のアナウンスがあるまで、何が起こったのか分かりませんでした。
結局、滑走路にカラスの大群がいて、万が一を考え着陸を見送ったこと、空港にカラスを追い払うよう要請したことを報告。最終的に10分ほど上空を旋回した後、無事着陸しましたが、この日は朝からなかなかうまくコトが運びませんでした。
この時の取材は、高齢社会への取り組みで、高齢化率が全国2番目の高知県と3番目の島根県を取材することになりました。島根での取材は、安心・安全な街作りで全国的に注目を集めた松江天神町商店街でした。
松江城をバックにしまねっことこうやくんの神仏混交ツーショット |
学問の神様の天神様を、お年寄り向けにしちゃうなんて、かなり突拍子もない案です。当然、商店街の人たちは首を傾げました。するとまた、ある若手が「天神さんは学業の神様だから頭が冴える。頭が冴えるイコール、ボケ封じ」という見事な3段論法を展開。それでもまだ、理事長を始め、ほとんどの人は半信半疑。腰が引けながら、ダメモトで天満宮の宮司に当たってみたところ、軽く一蹴されると思いきや「分院を建てればいいですよ」との粋な答えが返ってきたのです。
そして、さまざまな準備を整え、天神縁日の25日を選んで「おかげ天神」が建立され、商店街を歩行者天国とする天神市が始まりました。この企画は予想以上の人気で、毎月の縁日には、天神町商店街はお年寄りで大にぎわいすることとなったのです。
その後も、松江天神町商店街では、空き店舗を、お年寄りたちに無料開放して、お年寄りのたまり場を作ったり、市の協力も得てふれあいプラザと交流館を開設して、いつでも話し相手や湯茶の接待が出来る態勢を整えたりました。更に、こうした街づくりを進めるうち、口コミでどんどん輪が広がり、高齢者に関わっていた団体や学生が、天神市や街づくりに参加し始めました。
ミートショップきたがきのビーフコロッケ |
実は、この取材の後、我々は即、列車に飛び乗り、中国山地を越えて岡山へ。更に瀬戸大橋を渡り、その日の夜、丸亀で別の取材をすることになっていました。そのため、松江で行った所は、天神町商店街と松江駅だけでした。
ただ、そのほぼ1年後、再び田中さんと松江を訪れる機会がありました。前回同様、米子空港から松江に入りましたが、1年前の朝イチ着とは打って変わって、夜の到着でした。そして翌朝、宍道湖でシジミ漁を取材。そう、その時は「健康食材のふるさとを訪ねる」と題して、注目のシジミ・パワーを取り上げる企画でした。
シジミ漁は、午前中の3時間と決まっており、まずは宍道湖で漁を取材させてもらい、続いて、漁師さんから話を伺いました。最後は、地元でのシジミ料理を撮影させてもらうことになっていましたが、取材をさせてもらう店の都合もあり、シジミ漁の取材からはだいぶ時間が空いてしまいました。そのため、取材をコーディネートしてくださった方は、田中さんと私を松江城へ連れて行ってくれました。
松江城は元は国宝だったのに、解体修理が行われたため、戦後(1950年)、重要文化財に格下げになったそうです。そのため、国宝登録運動が展開され、2015年、65年ぶりに国宝に復帰しました。現存12天守のうち、面積は姫路城大天守に次いで2番目、高さは姫路城天守、松本城天守に次いで3番目の規模を誇ります。
で、ここからがなかなか面白い時間つぶしになったのですが、まず最初が「こうやくん」の登場。天守に向かっていた時、門の向こう側で写真を撮っている僧侶たちの姿がありました。僧侶の親睦旅行か・・・。なんぞと思って門をくぐると、被写体は2体のゆるキャラ。「しまねっこ」と「こうやくん」でした。
どうやら、高野山の僧侶たちが、こうやくんを伴っての出雲行脚だったようです。で、しまねっこは、出雲大社をキャラ化したものらしく、まさに神仏混交ツーショットです。観光客がうれしそうに写真を撮り、その中には、プロカメラマンの田中さんも混じっていました(笑。
その後、機材を持って歩くのもめんどくさいので、お茶が飲めるところを探したのですが、松江城周辺には何もなし。そんな中、徘徊するうちに見つけたのが、テレビで紹介されたことを高らかにうたうコロッケの幟。ここは田中さんのおごりでがぶり。
宍道湖は島根県の東北部、県庁所在地である松江市と、出雲市、斐川町にまたがる湖です。淡水と海水が入り交じる汽水湖のため魚種が豊富で、その代表格であるスズキ、モロゲエビ(ヨシエビ)、ウナギ、アマサギ(ワカサギ)、シジミ、コイ、シラウオは宍道湖七珍と呼ばれています。中でもシジミは、湖内でとれる魚介の9割を占めると共に、全国の漁獲量の約40%を占め、宍道湖はシジミの聖地となっています。
宍道湖でシジミ漁に携わっているのは約300人。新規参入はなく、その漁業者数は変わることがありません。しかも、鋤簾(じょれん)と呼ばれる漁具を使ってシジミをとることが許されているのは一家に1人のみ。今日は体調が悪いから、親に代わって子が漁に出るということも出来ず、子どもが漁に出られるのは、親が完全に引退してからになります。
同じヤマトシジミですが、砂地にいるものは茶色がかって小さく、泥地に生息するものは黒くて大きいのが特徴 |
宍道湖のシジミ漁は月、火、木、金の週4日、午前中の3時間(手掻きは4時間)以内の操業と決まっています。また1日の捕獲量を制限したり、鋤簾の目を粗くし小さなシジミはとらないようにして、資源を大切に守りながら漁に従事しています。
しかし、ここ数年は、天候不順の影響を受け、シジミの資源量の変動が大きくなっています。2006年に山陰地方を襲った集中豪雨で、いったん大型のシジミが激減。宍道湖漁業協同組合の井原幸夫さんによると、「宍道湖のシジミはヤマトシジミといって、薄い塩分濃度(海水の10分の1~3分の1)を好みます。宍道湖はヤマトシジミにとって絶妙な塩分濃度だったんですが、集中豪雨によってそれが薄まってしまい、多くのシジミが死滅しました」といいます。
シジミ汁とシジミのパエリア |
シジミは昔から身体にいいと言われていますが、その鍵は1932年にイギリスの学者らが発見した「オルニチンサイクル(尿素回路)」にあります。有毒物質のアンモニアを尿素に分解する際、重要な役割を果たすのがアミノ酸の一種オルニチンとなります。つまり、体内のオルニチンを増やせば、 オルニチンサイクルが活性化し、肝機能改善や疲労回復効果が期待出来るというわけで、そのオルニチンを多く含む食材が、シジミなのです。
ヤマトシジミの旬は夏。特に土用にかけて、シジミは産卵を控えて身が太り、一層うまみが増します。「土用シジミは腹ぐすり」と言われますが、昔から経験則として、夏のシジミはうまく身体にいいことを知っていたのでしょう。
※シジミ汁とシジミのパエリア:シジミと言えばすまし汁が定番。松江のシジミ汁には、大ぶりの貝がたくさん入り、その間に汁があるような案配。県外の人から見たら非常にせいたくなお椀ですが、松江ではこれが当たり前。またNHK連続テレビ小説「だんだん」でカレーやコロッケが登場して以降、松江でも写真のパエリアのようなシジミを使った創作料理が誕生しています。
※シジミ汁とシジミのパエリア:シジミと言えばすまし汁が定番。松江のシジミ汁には、大ぶりの貝がたくさん入り、その間に汁があるような案配。県外の人から見たら非常にせいたくなお椀ですが、松江ではこれが当たり前。またNHK連続テレビ小説「だんだん」でカレーやコロッケが登場して以降、松江でも写真のパエリアのようなシジミを使った創作料理が誕生しています。
高知まで行くンだと追って読み進めたら、結局岡山からまた宍道湖に戻ってましたね。
返信削除松江城が最近国宝になった話は聞いてましたが、解体修理したため国宝からランクダウンした経緯があるんですね。そう言えば昨年末に高知城に行きましたが、あちらも元国宝だったようです。
一気に高知までだと、半端ない文字数になりそうなので、まずは松江編です。次回は香川編。最後が高知編にする予定です。
削除いま、「ふるさと探訪」のまとめブログを作成中で、そちらをある程度まとめたいので、こちらは週2更新ぐらいのペースで、のんびりいこうかと思っています。