民謡のある風景 - 土の匂い超えた仏の里の踊り(大分県 草地踊り)


国東半島は、瀬戸内海の周防灘と伊予灘の間に丸く突き出た仏の里。海岸沿いにぐるりと国道が巡り、そこから半島の中心部へ向かって、放射状に道が延びています。どれもが仏と出会う道です。半島の西の根っこの辺りにある豊後高田市もまた仏の里です。平安時代に始まるという富貴寺、長安寺、奈良時代からという天念寺などの諸仏、それに何よりも、岩に彫られた磨崖仏との出会いが鮮烈な印象を残します。

そんな仏の里にふさわしく、8月、豊後高田市では、盛大な盆踊り大会が開かれ、草地地区に伝わる『草地踊り』も披露されます。

 ♪(レソ踊り・伊勢屋口説)
  国は豊後の高田の御城下
  御城下本町繁盛な所
  角の伊勢屋という町人は・・・

『草地踊り』は、四つのパターンに変化します。初めがレソ踊り、続いてマツカセ踊り、ヤンソレサ踊り、最後が六調子踊りとなって終わります。唄は、七七調を繰り返す口説き形式をとり、リズムの違う六調子だけが破調となります。曲は、江戸時代に流行した唄祭文の変化したものではないかと言われ、地元では、徳川吉宗の時代に始まる、とされています。

『草地踊り』は、踊りの変化につれて、踊り手の衣裳も変わります。初めはユカタ、ケダシの優しい女踊りだったものが、ハッピ姿となり、激しく力強い男踊りで六調子を踊り納めます。見せ場を意識したこの構成は、1933(昭和8)年、地元出身の演芸評論家・安部豊が演出したもので、全国民謡大会で優勝。戦後も、大阪万博、つくば科学博に招かれた他、欧米を巡って喝采を博しています。

その昔、岩に仏を残す行為は、人の予測を超えた先端性を持つものだったでしょう。その里に伝わる踊りだけに、土俗性を突き抜けて鮮烈です。

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