民謡のある風景 - 会津の酒どころに伝わる熱狂踊り(福島県 会津磐梯山)


福島県会津地方は銘酒の産地、つまりは水よく、米よく、大気澄んだ土地柄。その大地に、誠にどっしりとそびえているのが、磐梯山です。山容は穏やかですが、1888(明治21)年大爆発を起こし、北方に開くU字型の爆裂火口が出来ました。噴煙は山頂から1000m以上にも達し、被害戸数は463戸、集落ごとそっくり移転する村も出ました。

磐梯山は、南部の岩手山、津軽の岩木山のように、地元のシンボル的な山で、別名を会津富士とも呼ばれ、福島の古い民謡『玄如節』にも、その名が出てきます。

 ♪ハー 会津磐梯山 宝の山でヨーエ
  笹に黄金がなりさがるよ

この詩句を取り込んで、地元の「盆踊り唄」を早まの曲に変え、高音で唄い上げたのが、小唄勝太郎でした。唄の名も『会津磐梯山』と変えました。1935(昭和10)年に出たそのレコードは、明るさと唄いやすさが受け、全国的に売れました。

元の「盆踊り唄」は、やや地味で、踊りは「カンショ踊り」とも言われました。「カンショ」は会津方言で、「狂人」あるいは「狂気じみた」の意です。熱狂的に踊りまくる様子が目に見えてきます。

古い頃、盆踊りはどの地方でも、年に一度の男女出会いの場でもありました。中には酒を含んで踊った者もあったでしょう。いきおい踊りは「カンショ」風になります。それがまた、人々の楽しみでもありました。

この唄の囃し言葉には、有名な「小原庄助」さんがあります。「朝寝朝酒朝湯が大好き」で身上をつぶしたという御仁ですが、一説では、この人は長野県河南村大原(現・高遠町)の出身で、「大原の庄助」と呼ばれたといいます。文字通りの大酒家だったらしいです。

磐梯山を仰いで銘酒を酌めば、酒いよいよ旨く、ことに野口英世の古里・猪苗代町から見た山容は、北に裾野をひき、湖がよく似合います。まさに盃をはずませる山容というべきでしょうか。

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