函館本線長万部駅の名物駅弁「かにめし」
いつだったか忘れましたが、函館から札幌へ特急列車で移動した時のこと。途中の長万部駅で、名物駅弁の「かにめし」を買ったことがあります。私の中では、カニの駅弁というと、この長万部の「かにめし」を一番最初に思い浮かべます。
ある時、交通新聞社のウェブマガジン『トレたび』で、「日本全国駅弁の旅」という企画を見つけました。その第11回がカニ駅弁で、リードは次のようなものでした。
「昭和27年に初めて販売されて以来、根強い人気を誇るのがカニ駅弁。今回は、カニ好きの、カニ好きによる、カニ好きのための特集をお届けします!」
そして、北海道・釧路駅のたらば寿し、石川県・加賀温泉駅のかにすし、鳥取県・鳥取駅の元祖かに寿し、兵庫県・豊岡駅と城崎温泉駅の城崎のかにずし、福井県・福井駅などの越前かにめしの5点が紹介されていました。
あれ? 長万部の「かにめし」がないじゃない・・・。『トレたび』は、1952(昭和27)年発売開始の元祖かに寿し(鳥取駅)を最初のカニ駅弁としていますが、長万部の「かにめし」は、それより2年前の1950(昭和25)年に駅弁として販売を始めてるんですがね。
というわけで、専門の交通新聞社でさえ、追い切れていないのか、と思いきや、同じ『トレたび』の「旅行ガイド」という別企画に掲載された記事には、「カニを使った駅弁は各地で発売されているが、元祖は長万部『かにめし本舗かなや』の『かにめし』」と、きっちり書かれていました。
かにめし本舗かなやは、昭和初期に、鉄道交通の要衝として栄えた長万部駅で、弁当を販売していた長万部駅構内立売商会(1928[昭和3]年創業)が前身です。かにめしは、第2次世界大戦直後、食糧難で弁当の食材が入手困難だったことから、噴火湾でとれた毛ガニを塩ゆでし、弁当の代わりにホームで立ち売りしたのが始まりです。
しかし、「煮かに」は毛ガニの漁期以外には販売出来なかったため、カニのおいしさを1年中味わってもらえるようにと、何度も試作を重ねた末、1950年に完成。駅弁「かにめし」として販売をするようになりました。最盛期の昭和30年代には、15人の売り子がホームに並んだといい、長万部の「かにめし」は、一躍、北海道の名物となりました。それが今年になって、北海道新幹線の札幌延伸に伴い、函館本線長万部~余市間の廃止が確定。函館~長万部間の存続も厳しく、北海道新幹線並行在来線の全廃もあり得るという話をニュースで知りました。
それで、思い出したのが、長万部駅の「かにめし」です。在来線が廃止されたら、「かにめし」はどうなるん? 私の関心は、そちらでした。
しかし、調べてみると、列車の高速化もあり、1998(平成10)年には長万部駅の停車時間が短縮され、ホームでの立ち売りをやめ、特急車内での予約販売のみとなっていたとか。私はギリ、ホームで駅弁を買うことが出来た派で、ホームの売り子から駅弁を買うというのは、旅情をかき立てる経験だったなと思う今日この頃です。
それでも、長万部名物の「かにめし」は残っており、現在は駅弁の形を残したまま、長万部駅前のかなや本店で販売している他、食事処の「かなや食堂」で食べられるようです。また、インターネット販売もしているということで、早速、注文してみました。
お取り寄せの「かにめし」は冷凍になっており、電子レンジで解凍します。当然、温かい「かにめし」が食べられるわけですが、どうも駅弁で食べた時のイメージが強すぎるのか、うーん、こんな味だったかな、というのが正直な感想。後で口コミなどを見ると、駅弁と同じ味とか、昔食べたものと同じでおいしいといった評価ばかり。
なので私の場合、以前、特急の車内で食べた「かにめし」のおいしさが、頭の中で増幅してしまい、美化しすぎていたのかもしれません。
コメント
コメントを投稿