最後のブルートレイン・寝台特急「北斗星」に乗った話


北海道伊達市での取材後、寝台特急「北斗星」で帰って来たことがあります。

噴火湾に面した伊達市は「北の湘南」と呼ばれ、北海道の中では穏やかな気候で知られます。2008年にサミットが開催された洞爺湖の南、新千歳空港まで約100kmという場所にあります。

取材に行ったのは洞爺湖サミットのあった2008年で、伊達市の人口は約3万8000人でした。その中に、知的発達障害を持つ人たちが、たくさん暮らしており、「ノーマライゼーションの町」として全国区の存在となっていました。伊達の取材は、障害者自立支援をテーマにしたもので、民間企業に勤め、グループホームで暮らす方の生活を、丸1日密着させてもらいました。

北斗星B寝台
最初はB寝台の上段でした
で、取材を終え帰る段になって、ルートを検索したところ、出てきたのは寝台特急で帰るか、1泊して朝一番の飛行機で帰るかの2択でした。伊達市から新千歳空港まで、特急列車だと1時間20分ほどですが、本数が少なく、19時過ぎでは羽田へ向かう最終便には間に合いません。そこで、カメラマンの田中さんとも相談の上、北斗星で帰ることを選択しました。

北斗星は、青函トンネルが開業した1988(昭和63)年3月13日に、東京と北海道を乗り換えなしで結ぶ初の直行列車として運行を開始しました。それまでは、「津軽海峡冬景色」にあるように、上野発の夜行列車で青森まで行き、そこで青函連絡船に乗って北海道へ渡っていました。

札幌から上野までは、千歳線・室蘭本線・函館本線・津軽海峡線・青い森鉄道線・いわて銀河鉄道線・東北本線を通るルートになります。我々が乗車した伊達紋別駅は、室蘭本線の駅で、北斗星が17時過ぎに札幌を出てちょうど2時間、五つ目の停車駅となっていました。

イメージしていた寝台列車より個室が多かったのですが、同じ寝台料金で利用出来るとあって人気を集めており、既に個室は満員。田中さんと私は、上下2段の寝台が二つ並ぶB寝台の上段になってしまいました。寝台も荷物を入れるスペースも完全オープンなため、田中さんの機材が心配で、食堂車やサロンにも行けず、しばらく寝台で待機。

北斗星A寝台ツインデラックス
キャンセルがあったA寝台ツインデラックスに移動
その後、検札に来た車掌さんに個室のキャンセルがないか聞いたところ、ツインが空いているということで、差額7000円也を払って移動。ツインとはいえ、やはり上下2段の寝台でしたが、カード式のキーがついており、安心して荷物を収納。ようやく初寝台特急の車内を探検、パブタイムに入った食堂車も利用することが出来ました。

ちなみに北斗星には、1人用個室のA寝台ロイヤル、我々が入ったA寝台ツインデラックス、B寝台デュエット、B寝台ソロ、B寝台があり、この他、食堂車やロビーカー、シャワールームなどの設備も整っていました。

実はこの時、図らずも北斗星に乗ったことで、私にとっては初の青函トンネル入りを果たしました。たまたま、前の月に取材のため関門トンネルをくぐったばかりだったので、これにより今まで未体験だった海峡トンネルを、一気に制覇することになりました。そしてこれ以降、北海道新幹線開業前に函館から青森までスーパー白鳥26号で移動したり(インパクト大の青森二大B級グルメ - 生姜味噌だれおでんと味噌カレー牛乳ラーメン)、北海道新幹線で上野〜函館を往復したり(銘酒「鶴の友」がある函館の居酒屋てっ平)と、青函トンネルには何度かお世話になりました。

北斗星A寝台ツインデラックス
A寝台ツインデラックスの下段ベッドはソファにもなります

ちなみに、「最後のブルートレイン」と呼ばれた北斗星も、2015(平成27)年3月13日をもって定期運行を終了。とはいえ、ブルートレイン・ファンは多いようで、翌16年12月には、JR馬喰町駅隣に北斗星の実車パーツを再利用した宿泊施設「トレインホステル北斗星」がオープン。人気を集めていましたが、コロナ禍の中、昨年7月末で営業を休止。再開について、サイトでは見通しが立ち次第となっていますが、今のところ不明です。

一方、我々も利用した北斗星の食堂車グランシャリオは現在、JR武蔵野線と埼玉高速鉄道の東川口駅近くで、ベーカリーレストラングランシャリオとして営業しています。

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