地元開催でお家芸復活の期待がかかる全盲の柔道家 - 永井崇匡さん
■柔道B1クラス73kg級代表 |
生まれつき眼球に異常があり、2歳で完全に視力を失いました。小学校1年の終わり頃、父が少しでも運動をさせたいと、地元中之条町の林昌寺道場で柔道の指導をしている知人に相談し、道場に通い始めました。外遊びは危ないと止められていたため、道場で思う存分動けるのが楽しく、永井さんは熱心に練習に励み、小学生時代には県大会で2度3位に入賞。もちろん相手は全て健常者でした。
中学は東京にある筑波大学付属視覚特別支援学校に進学。寮の門限があり、柔道は2週間に一度、自宅に帰った時に林昌寺道場で稽古をするぐらいでした。それでも中学3年で出場した視覚障害者の大会で優勝。高等部に進むと門限が延び、近くにある系列の筑波大学付属高校の柔道部で練習するようになりました。高校1年で出場した健常者の大会では決勝で破れましたが、健常者とも互角に渡り合える実力が評価され、視覚障害者柔道の強化合宿に呼ばれるようになりました。その後、数学教師を目指し、2年間の浪人生活を経て、学習院大学理学部数学科へ進学。運動と勉学を両立させ、2019年春、大学を卒業し、同大職員として仕事をしながら、東京パラリンピックを目指しました。
視覚障害者柔道は全盲から軽度の弱視まで三つの障害クラスが設定されています。しかし、実際には全クラスの選手が一緒に試合をします。全盲の永井選手には不利ですが、感覚を研ぎ澄ませハンディを克服。国内では優勝して当たり前と言われるほど、一歩抜きん出た存在ですが、目標はあくまでも東京パラリンピックでの金メダル。
柔道男子がパラリンピック正式競技になった1988年のソウル大会で日本は金メダル4個を獲得しましたが、その後は右肩下がりで、前回リオ大会では金メダルがゼロに終わりました。地元開催で、お家芸復活ののろしを上げたい日本パラ柔道界にとって、永井選手は期待の星です。
得意技は巴投げと寝技。最近はそれに加え、小外刈りなどの足技も磨いています。また、視覚障害者柔道では組み合った状態で試合が始まるため、力の強い外国人選手に対抗出来るようフィジカルの強化にも取り組んできました。
【成績】8月28日柔道男子73kg級予選に登場した永井選手(B1クラス=全盲)は、同じB1クラスのアルゼンチン、ラミレス選手(クラス)を相手に39秒、巴投で一本勝ちを収め、幸先の良いスタートを切りました。しかし、続く準々決勝で、ロシア・パラリンピック委員会のクトゥエフ選手(B2クラス=弱視)に敗れ、敗者復活戦に回り、リトアニアのバレイキス選手(B3クラス=軽度の弱視)と対戦。17秒に巴投で先に技ありを決めましたが、後半に逆転を許し、惜しくもメダル獲得はなりませんでした。
●競技日程:柔道男子73kg級→8月28日
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